
「モーラナイフ」のフックナイフでスプーンを削り出す|筆とまなざし#460
成瀬洋平
- 2026年04月29日
木を彫り始めたきっかけはプライベートウォールのホールド作り
最近、木彫を始めた。始めたといっても、気が向いたときに実家の倉庫に転がっている木材を引っ張り出してきてはノミや彫刻刀で削っているだけなのだが、これがとても楽しい。
父が木工をしていた関係で、木材や木工道具が当たり前のように身近にあった。小学生のころ、夏休みの自由制作にライオンのレリーフを彫ったことはいまでもよく覚えている。アトリエ小屋を作ったのもその延長だ。
木を彫り始めたきっかけはプライベートウォールのホールド作りだ。既成ホールドは高価だし、木のほうが指皮に優しい。壁が小さく大きなホールドを取り付けるとそれだけで面積を占領してしまうため、小さなビス止めのカチがほしくなったのだ。ちなみにカチは大の苦手なのでトレーニングのためにもちょうどいい。石油を使わず、不要になったら燃やすこともできるのでとてもエコロジー。なによりタダなのがいい。
ナラ材の木端を見つけてきて適当な大きさに切る。彫刻刀を使うとインカットしたホールドを彫ることができ、曲線や表面のテクスチャーも工夫することができて楽しい。なかなか良いホールドができたと自己満足し、次に作りたくなったのがスプーンである。
スプーンの「つぼ」を作るには特別なノミやナイフを使う。ノミは丸スクイと呼ばれるものが代表的で、刃先が曲がった丸ノミである。ナイフは先端が半円状になったフックナイフと呼ばれるものである。まずは丸スクイを買って試したのだが、物が柔すぎてすぐにダメになってしまった。その反省を活かし、少し値は張るが「モーラナイフ」というブランドのフックナイフを買ってみた。130年の歴史を持つスウェーデンのブランドで、独特な刃先の形状と握りやすい木製ハンドル、そしてレザーで作られた鞘がかっこいい。生木をそのまま削って加工する「グリーンウッドワーク」でも人気らしい。
ノミで荒削りし、スプーンの「つぼ」を削る。最初は慣れないが、削りやすい角度や刃先の回転の仕方がわかってくると思うように削れるようになってきた。1〜2時間ほどで素朴で愛らしいスプーンが完成。そういえば、アルプスの少女ハイジはこんなスプーンでご飯を食べていたっけ、と子どものころに見たアニメのワンシーンを思い出した。きっと、おじいさんがハイジのために削り出してくれたスプーンに違いない。
著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平
1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。

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