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【産後登山体験談】妊娠・産後に悩んだ経験が「山好きパパママ部」発足の原点

出産という大きな山を乗り越えたあと、どのようなステップを経て登山を再開していったのか。山を愛してやまない女性たちの産後登山体験談をお届けするインタビュー企画です。

Photo/Toru Fukunaga

プロフィール

フォトグラファー・モデル・翻訳家/鈴木千花さん

1985年、山梨県出身。1児の母。プロダイバー、バックパッカー、教師、バーテンダー、通訳翻訳家、フォトグラファーとさまざまな職を経験し、東京を拠点に山の撮影やモデル活動を中心に行う。Instagramアカウント「すず(@suzuwanders)」で、山×カメラ×子どもの情報を発信中。2026年2月に、SNSコミュニティ「山好きパパママ部(@papamama_bu)」を立ち上げる。自然観察指導員。

妊娠をしたことで、山中心の生活がすべて失われたように感じた

20代、世界中を旅していた鈴木千花(すず)さんは、帰国後、2017年に谷川岳に登ったことをきっかけに、30代で初めて本格的な登山を始めます。2019年には、クライミングや沢登りも始め、その後もテント泊縦走、冬山登山、アイスクライミングなど、あらゆる山のアクティビティを経験。『PEAKS』をはじめとする登山専門誌の撮影やモデルを務めるなど、プライベートだけでなく仕事でも頻繁に山へ通うなか、2023年に第1子を出産しました。

▲クライミングイベント「クライムオン‼」への参加や、山仲間が教えてくれた沢登りを経験したことで、山の世界へさらに足を踏み入れることになったそう。

――妊娠前は、どのくらい山へ出かけていましたか。

すず 1年の半分は山のなかにいました。30代後半になって、山スキーも始めたんですよ。いっぽうで、子どもがほしかったので妊活も始めていました。妊活中は、「山へ行けなくなったらしばらく使えないし、いま買う意味がないよな……」と、授かったあとのことも考えて山スキーの道具を買うのも1年間我慢していました。また仕事やプライベートに関して、数カ月後の予定が立られないというジレンマもありましたね。そんななか流産が2回あって、「我慢しても結果が実るわけではないんだ……」とモヤモヤして。

――それはモヤモヤしますね。

すず そんな思いをするのが嫌になって道具を買ってみたら、なんと3回目の妊娠は成功したんです。妊娠って、きっとメンタルも大切なんでしょうね。「いままで大好きだった山へ行けなくなる」ということが、私にとってはほかの人以上にストレスだったんだと思います。私にとって、山は趣味というより生活そのものなので、そのすべてが失われたような気分でしたから。「妊活中でも好きなことをやって、無理なら無理でいいかな」と思うようにしたら、成功しました。

――不思議なものですね、本当に。妊娠がわかってからも、山へは出かけていましたか。

すず はい。妊活中の体験があったので、我慢しすぎず、無理のない範囲で楽しんでいました。妊娠がわかったのは冬でしたが、元々予定を立てていたので、長野県の米子大瀑布でアイスクライミングをしたり、北海道で雪山のバリエーションルートを登ったりしていました。臨月に、アクセスも歩行距離もちょうどよい裏高尾の景信山にも行きました。

夫と協力し合いながら手に入れた「私の山時間」

――出産を無事に終えたあと、どのように山を再開しましたか。

すず 子どもが生まれたのが秋だったのですが、雪山には行きたいと思っていました。産後直後の年始に景信山のイベントに参加しながら足を慣らし、生後3カ月のころに友人と北八ガ岳の双子池ヒュッテへ行きました。

――行き帰りの時間も含めると、けっこうな長時間、お子さんを預けることになると思いますが、ご家族の協力があったのでしょうか。

すず はい、夫に預けて行きました。子どもを産む前から、当たり前に「産後も絶対に山に行く」と思っていたので、「ママじゃないと無理」という状況にはならないように、日ごろから夫と子どもだけの時間を積極的に作るようにしていたんです。

私の子どもは夜泣きや授乳が本当に多く、日常的に寝不足で疲弊していたので、山の予定の前後に自分の体力と気力を回復させるための時間も必要でした。お互いの両親にも頼れなかったので、仮に1日の山行だとしても夫に2晩お世話してもらう必要があるなど、とても難しくて……。いっぽう、山以外の日は私が基本的にひとりで面倒を見ていました。なので私の産後の山時間は、夫婦で協力し合い感謝し合いながら生み出した、貴重な時間だったんです。

――家族によって状況は違うと思いますが、育児をしながら山時間を確保するのは大変なことだと、すずさんの話を聞いて改めて感じました。ちなみに授乳は母乳とミルクのどちらでしたか。

すず 私は母乳とミルクの混合で育てていました。ミルクであげる量のほう多かったです。ただ雪山に行ったときは、前日の夜に出かけて当日の夜に帰るようなスケジュールだったので、友人の車の中や山小屋の中で搾乳していましたね(笑)。

▲産後初の本格的な登山が、気心知れた山仲間と歩いた冬の双子池ヒュッテだった。Photo/Toru Fukunaga

――産後初の雪山はどうでした?

すず すごく楽しかったです! どこも大雪予報で、普段なら山行自体をキャンセルするような日でしたが、ずっと前から調整してやっと作れた私の休日だったので、雪でも楽しめる場所を探し、友人たちもいっしょに遊んでくれました。

じつは産後、社会と離れてしまったような気がして孤独を感じていたんですよね。フリーランスなので産休も育休もなく、だからといって妊娠前とおなじようには仕事ができない。自分の存在意義に、よく疑問を感じていました。いままで仲のよかった友人と距離ができたようにも感じてしまって……。私にとっては、育児で体力が削られることよりも、そのほうが辛かったです。

――産後の心のバランスを保つために、やっぱり山の時間が必要だったのですね。

すず そうですね。その後も、頻繁に山へ出かけていました。体力を戻すために、子どもとの散歩で歩いたり、バックパックを背負って買いものに行ったり、日ごろから意識的に運動もしていましたね。寝かしつけの抱っこも、「トレーニングになる」「自分のためになる」と思うと、まったく苦にならなかったです。

――お子さんの山デビューはいつでしたか。

すず 生後7カ月のころに、ベビーキャリーに載せて高尾山に行きました。そのときの印象は、高尾山なのに意外と大変だったなと。子連れだと準備は増えるし、お昼寝・ごはん・授乳の時間を調整しながら歩かなければならない。しかも私の子ども、当時すでに12㎏あったんですよ。

――それは大きな赤ちゃんですね!

すず ビッグベビーで(笑)。ベビーキャリーが4㎏あって、それに水、食糧、哺乳瓶、おむつなどを入れていたので、20㎏くらいにはなっていたと思います。ケーブルカーを使って行きましたが、結構なトレーニングになりましたね。子どもは、真顔でまわりの環境をじっと観察していました。外でごはんを食べたのもそのときが初めてでしたが、とても楽しそうだったのでうれしかったです。

▲すずさんが初めて子連れで登った山は、自宅からアクセスのよい高尾山。2歳になったいまは体重が17㎏になっているので、「子どもも登りは歩けるだろう」という前提で山を選ぶようになった。

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ランドネ 編集部

ランドネ 編集部

自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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