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私ならではの|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #62

普段、山に行く際には山岳専門の天気予報を利用しているのだが、久しぶりに風速30mを超す予報が出ていて驚嘆した。私の山歴のなかでこのレベルの風の中を探索したのは2〜3度ほどしかなく、また正直味わいたくない状況である。いまより少し若いころは体感温度40℃レベルの山行なら強行していたのだが、近年は無理なく安全最優先。でも相変わらず、唯一無二の、ライチョウの生態を追い続けている。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

私ならではの

1月。ライチョウが棲まう高山帯は一年でももっとも過酷な季節となる。北アルプス・表銀座のふもと、安曇野の平地の標高は500mだが、高山帯の標高は2,500m超。その標高差はざっと2,000m、気温は12℃ほどの差が生まれる。つまり、安曇野で気温が0℃のときは高山帯はマイナス12℃ということになり、1月においてはライチョウの生息地は連日あたりまえのようにマイナス20℃を下回る。そこに強めの風がひっきりなしに吹いてくるものだから過酷な環境であることは想像に難くないだろう。

天気予報と天気図を見比べ、穏やかそうな日を選び山に入ってみる。季節を問わず多少荒れているほうがライチョウとの遭遇率は高いのだが、そこは命を天秤にかけるに等しいことなので状況を見極めての判断となる。もちろん、荒れた天気のときにしか撮れない画もあるので、あえて過酷な状況に突撃することもごくたまに、ある。

さて、前日までに降り積もったヒザ高の新雪を掻き分けて黙々と高山帯へ向けて突き進んでいく。気温自体はマイナス15℃程度、風は10mとそこまで強くないため、体感温度はマイナス25℃といった感じ。そこに多少の日差しが加わると「寒いけど暑い」というなんとも言えない環境となる。

そうこうしてライチョウ生息地に到着。運が良いとこの地点から5分程度で遭遇することもあるポイントなのだが、ここから全神経を集中して捜索していくことになる。晴天時のライチョウの活動は消極的である。雪の中から頭だけを出して埋まっている潜航状態の子が多く、その見た目は雪から飛び出た小枝のような造形のため非常にわかりづらい。ただ、私の目はクローバーの茂みの中から四つ葉をほいほい見つける人と同様の感覚でライチョウを探り当てることができるため、そこまで苦労することはない。ちなみに視力は裸眼で2.0を維持している。

ライチョウが視界のなかに居れば即座に反応することができると自負しているのだが、居なければ当然見つけることはできない。この日は珍しくボウズを引くことになり、陽が沈む前に拠点を建造(雪道を掘って中にテントを張る)して夜を越すことになった。

あくる日。厳しい寒さゆえに浅い眠りを繰り返し衰弱した体を叱咤して出撃をする。朝夕は遭遇率が高いため前日の不作を取り戻すべく再度神経を尖らせる。それこそライチョウ自身の気分次第ではあるのだが、アテを付けたポイントに今度はちゃんと現れてくれた。満を辞して撮影の開始である。

日の出からは少し時間が経ち、空の赤みも薄くなってしまったが、私同様に眠りから覚めて活動し始めたオス鳥が1羽、雪から顔を出しているダケカンバの枝先をついばんでいた。ライチョウの知覚は野生動物よろしく我々人間よりも鋭く、早期に私の存在を捉えている。ここで重要なのが彼にとって状況異物である私が有害か無害かという点である。

相変わらず深いラッセルを強いられるわけだが、そんななかでも彼を注視しながら射程距離を詰めていく。オスは警戒や興奮状態に移行すると目の上に赤い肉冠を表すのだが、この状況の場合においては彼を刺激してしまったというこちらの不手際の証明にもなってしまう。あくまで彼らを撮らせてもらっているというスタンスからそれは恥でもあるので刺激せず、とにかく持てる能力をフル活用して思い描く画角の位置まで歩を進める。

今回の一枚は、私の定番の作品のなかから「まめ大福」と名付けたものをチョイスした。ライチョウは、警戒させてしまうと脱兎のごとく逃げないまでも肉冠をあらわにしてしまったり、背中を見せていつでも退避できる体勢になったりと分かりやすい忌避反応をみせるのだが、このときは目の前で穏やかな表情を浮かべる姿を撮ることができた。この写真で私とライチョウとの関係性を感じてもらえたらうれしく思う。

今週のアザーカット

こちらは自宅にあった自作のライチョウ表現物なんですが、ご覧の通り「木彫り」「張り子」「改造プラモデル」「イラスト」「観察ルール」などなど、さらにこのエッセイを含め、ホールでの講演会や、普及啓発活動などなどいろいろしています。そして今年はこれらに加えて新たな試みを企んでおります。惚れた相手、ライチョウを表現するために私じゃないとできないことを私なりのやりかたで今後とも遂行して参りますので、引き続きご期待いただければと思います。

【お知らせ】2026年1月より、月1回の更新になります。引き続き旬のライチョウの姿をお楽しみください!

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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