
信玄堤と「おみゆきさん」を訪ねて|やまのさち 地図から始まる寄り道 Vol.1
渡辺佐智
- 2026年10月09日
やまのさちは、山の幸をおいしくいただき、自然の恵みに感謝!からスタートして早11年。食欲はすこ〜し落ち着き、いまは「この地形はなぜこうなった?」を追いかけるように。今回から〝食べられないやまのさち〟をお届けします。
南アルプス登山の拠点、芦安からの帰り道、地図上に「将棋頭」の文字が。「なんで、ここにでかい将棋を並べたのか」から始まった地形の旅へ。
御勅使川(みだいがわ)に導かれ、信玄堤とおみゆきさん
「水と安全はタダ」といわれてきた日本。崩れつつありますが、いまのところ、飲み水で風呂に入れるほど恵まれている私たち。ここ山梨県でおいしい水といえば、南アルプスの天然水。南ア北部の花崗岩で磨かれた水は、登山中にありつけば「うめーっ」と腹から低音がもれ出てしまいます。
さて、そのうまい水は、釜無川として甲府盆地西部を流れ、急流・富士川になり太平洋へ向かいます。水は恵みであると同時に災害にもなるわけで。私たち登山者におなじみの夜叉神峠、櫛形山付近から始まる御勅使川は、約19㎞という短い区間を一気に駆け下り釜無川に突っ込みます。その標高差なんと1450m。御勅使川に大雨が降れば、あっという間に川は氾濫し、大災害に。
そんなことにならないための「せき」を地形図上で数えてみたら、夜叉神峠付近から釜無川にぶつかるまでに、93カ所! て、マジか。現代の土木技術でその数ですから、昔はどうしたのか。
そこで信玄堤の出番です。信玄堤のひとつである将棋頭は、水をまとめて、流路を変えて、高い岩壁にぶつけて、水を本流へ。人力、スゲー! もっとすごいのは、その治水のメンテナンスを神事として残したこと。毎年4月、御勅使川の主流、釜無川沿いで「おみゆきさん(御幸祭)」というお祭りが行なわれます。堤防を踏み固め、治水のありがたみをいまに伝えてくれるのです。「ソコダイ!ソコダイ!」




「ソコダイ! ソコダイ!」
「ソコダイ! ソコダイ!」この特徴的なかけ声は、白塗りの化粧と女装した男性の担ぎ手たちが神輿を担ぐときに、活気づけるもの。(出発地から目的地が遠いので)「すぐ、そこだ!」と励ます意味が一般的ですが、担ぎ手のおじさんによると、「土手の底を固めろ!」とのこと。祭りの起源は1200年前といわれますから、連綿と受け継がれた暮らしの知恵に惚れ惚れデス♡。
なんて思っていたら、新聞(※出典: 朝日新聞2026年4月5日朝刊)の記事で、全国の都道府県のうち、山梨県の水道料金が最安から2番目、と知りました。豊富すぎる水源(山)の恩恵を、とっくに受けていたのです。このご時勢に、ありがてぇ~
教えてくれた人
登山ガイド・渡辺佐智さん
登山の行き帰りで見つけた「なんだこれ?」行ってみなけりゃわからない寄り道のおもしろさをお届け!
Instagram @watanabe.sachi
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