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はじめてのテント泊登山 計画から実践まで(後編)|PEAKS 2026年9月号

この記事は「はじめてのテント泊登山 計画から実践まで」全3回のうちの後編(フィールド実践編②食事〜撤収)です。前編(山行計画編)・中編(フィールド実践編①パッキング〜設営)もあわせてご覧ください。中編では、装備のパッキングからテントの設営までを実践的に学びました。


山でひと晩をすごすには、どんな準備と行動が必要なのか?

ふたりのPEAKS読者モデルが、山行計画から装備選び、パッキング、設営、食事、撤収まで、最前線で活躍する山岳ガイドとともに、初めてのテント泊登山に必要な知識と流れを実践的に学んだ。あこがれのテント泊登山へ、いよいよ一歩を踏み出すとき。小誌で募った読者モデルのなかから選ばれた2名が、2026年4月号のテント泊登山の装備計画編に登場。それから数カ月を経て、実際の山へ出かける機会が訪れた。

今回は企画を2パートに分け、まずは山岳ガイド・杉本龍郎さんとともに、どんな山をどう歩くのか、山行計画の立て方を学ぶところからスタート。自分たちが抱くテント泊登山の漠然としたイメージを、具体的な計画にどう落とし込んでいくかを聞いた。翌日には全装備を背負ってフィールドへ。天候悪化で実際の1泊は見送ることになったものの、テント場での設営や食事、撤収まで、初めてのテント泊に必要な手順を実践的に体験。所作やテント場で快適にすごすコツ、マナーまで、山でひと晩をすごすための基本を確認していった。

写真◉加戸昭太郎 Photo by Shotaro Kato
文◉福瀧智子 Text by Tomoko Fukutaki
イラスト◉マエハラシオリ Illustration by Shiori Maehara

STEP9 山ごはんは楽しい

ただの栄養補給じゃない

テント泊での食事は、ただの栄養補給ではなく、山ですごす時間を豊かにしてくれる大きな楽しみのひとつ。テント場への到着が近づくころには、夕食の献立が頭をよぎるほど、山ごはんへの期待は高まっていく。重い荷物を背負って歩いたあとの空腹、夕暮れの景色、湯気の立つ鍋や温かい飲み物は、それだけでごちそうだ。とはいえ、食材や調理道具を増やしすぎると荷物は重くなり、ゴミも増える。初心者はまず確実にお腹を満たせることを基本にして、慣れてきたらいかに荷物を減らし、ゴミを出さず、手軽に贅沢するかを考えたい。軽量化と効率化の工夫まで含めて楽しめるようになると、山ごはんの世界はいっそう楽しくなる。

水の確保にボトルの準備を

調理には水が不可欠だが、水場の有無はテント場によって異なる。道中の沢で汲んでいく場合もあり、水を運ぶボトルは必携。使わないときの携行サイズが小さいソフトボトルが持ち運びに便利だ。

BEGINNER’S MENU/山ごはん初めてコンビの夕食メニュー

吉野さん
メニュー:アマノフーズ/ビーフシチュー、尾西食品/尾西の白米
調理道具:プリムス/153ウルトラバーナー、モンベル/アルパインクッカー11ディーブ

毎食同じようなものになってしまいそう
調理はお湯を沸かして作るものだったので思ったよりも簡単でした。味も美味しかったです! が、テントで何泊もするとなると炭水化物中心、毎食同じようなものになってしまいそう。杉本さんに教えていただいたような工夫を自分でもできるようになって、ご飯も楽しみたいと思いました!

下田さん
メニュー:モンベル/ガパオリゾッタ
調理道具:ジェットボイル/ジップ0.8L

用意した食事の量が自分には足りなかった
アルファ化米を1食1パック持って行きましたが、全然足りませんでした。山行を重ねて、自分に合った食事の適量を見極めていきたいです。また、杉本さんの山ごはんを実際に拝見し、ほんのひと工夫で満足度がガラリと変わるのだなと、非常に勉強になりました。今後取り入れていきたいです!

杉本さんのおすすめメニュー

最初から特別な山ごはんを作ろうとせず、食べ慣れたものをベースに考えると取り組みやすいと思います。家庭のストックにもある缶詰は、パウチタイプを選ぶとゴミを削減できます。餅は手軽なエネルギー源で、しゃぶしゃぶ餅なら調理も簡単。乾燥野菜ミックスはなんにでも使え、賞味期限も長いので次の山行でも使えますよ。

副菜

縦走後半に体が求める

海藻とチキンのサラダ

水で戻した海藻や寒天に、サラダチキン、カニカマ、ミニトマトを加え、ドレッシングで味付け。生ものや食物繊維が不足しがちな山、とくに長い縦走の後半に体がよろこぶ一品。日持ちする野菜などをうまく取り入れれば、大盛で食べたくなる満足メニューに。

メイン

良質たんぱく質をのせて

サバ味噌と餅のカラーメン

インスタントの味噌ラーメンにパウチのサバ味噌と乾燥野菜を加え、薄切り餅で食べごたえをプラスした簡単メニュー。「炭水化物に偏りがちな山ごはんでも、サバ味噌などの食品を利用すれば良質なたんぱく質をしっかり摂れます」と杉本さん。大鍋で作ってシェアするのもおすすめ。

デザート

体に染みる優しい甘さ

餅入り時短おしるこ

フリーズドライのおしるこにお湯を注ぎ、よく混ぜて食べたい枚数の薄切り餅を加えるだけ。疲れた体が糖質を求めるせいか、普段甘党でない人にも染みる一品だ。アレンジとして塩をひとつまみ入れても◎。甘さがさらに引き立つ。

杉本さんの調理セット例

下に敷いてある大判の薄いカッティングシートは、調理台にも物置きにも使えて汎用性大の便利アイテム。汁物の取り分けに便利なお玉、シートゥサミットの折りたたみ式のクッカー、安定感の高い分離型ストーブなど大人数にも対応。

山ごはんを快適にするコツ&注意点

ライターはフリント式が安心

電子式ライターは高所や低温下では火花が飛ばないことも。気圧や気温の影響を受けにくいフリント(ヤスリ)式なら、山でも着火しやすい。

風防で火力を安定させる

風で炎があおられると湯が沸きにくく、ガスも激しく消耗する。石やアルミ風防で囲い、火力を安定させよう。

ゴミは密閉して持ち帰る

汁もれや悪臭はパックを汚すだけでなく、クマなどの野生動物を寄せる原因にも。密閉袋など対策を万全に。右はIKEAで見つけた密閉バッグ。

食器は拭くか湯ですすぐ

山では洗剤で食器を洗えない。汚れはペーパーで拭き取るか、クッカーに少量の湯を沸かしてすすぎ、スープなどにして残さず飲み干そう。

テント内で火器は使わない

テント内での火器使用は一酸化炭素中毒や火災を招き命に関わる。調理は前室など、換気できる外の空間で!

STEP10 テントですごす食後のひととき

食後の片付けを終えると、山の一夜はいよいよ本番を迎える。周囲が静けさに包まれるこの時間には、あわただしい街では味わえない特別なすごし方がある。スマートフォンの画面を閉じ、星空やランタンの灯りを眺めながら静かにすごすのもいい。大自然のなかで、ただなにもせず贅沢にぼーっとするのも最高だ。家ではなかなか進まない本を読んだり、同じ山を歩いてきた仲間と時間を忘れてじっくり話し込んだりするのも、山の夜ならではの格別なひとときになる。そして、心地よい疲労感に包まれながら静かな暗闇のなかで眠る時間は、心身を深く休ませてくれる。ちなみにテント場の就寝時間は20時ごろと覚えておこう。テント場のすごし方は自由だが、周囲への配慮は忘れずに。

今日の余韻に浸る

無事に一日を終えた安堵感のなか、今日歩いてきたルートを振り返る時間は至福のひとときだ。登頂のよろこびや美しかった景色を脳裏に思い浮かべ、心地よい疲労感に包まれながら明日の英気を養おう。山でしか味わえない静かな達成感が、心を深く満たしてくれる。

山仲間と語らう

この時間を楽しみに登る人も多いはず。美味しいお酒とおつまみを担ぎ上げ、山仲間と話し込む時間は最高だ。写真はワイン専用のソフトボトル(プラティパス)やワイングラス(GSI)。便利な山飲みアイテムも活用してみては。

本を読む/次の山を考える

小説なら何千冊分もの本を携帯できるKindleは、山で本を読みたい読書好きの強い味方だ。また、広範囲の山地図を1冊携行し、みんなで囲めば次の山行への夢も膨らむ(右『山と高原地図 日本アルプス総図』¥1,760)。

嗜好品を味わう

挽き豆入りのパックで手軽に2杯分の本格ドリップコーヒーが楽しめる「THE BREW COMPANY」。

ゆらめく灯りを楽しむ

ガスやキャンドルのランタンは、山の夜を彩る最高の嗜好品。不規則に揺れる炎をぼんやりと見つめていると夢見心地に包まれる(写真はSOTO)。

STEP11 朝のタイムライン

起床から出発まで

山の朝は、出発までに想像以上に多くの作業が待っている。家とは違い、洗面やトイレのための移動から始まり、限られた道具での調理や片付け、ひと晩をすごしたテントの撤収、そしてすべての荷物をきれいに元ある場所へ収めるパッキングまで、多岐にわたる工程をこなさなければならない。もし雨が降ろうものなら、作業の手間はさらに増えてしまう。また次の目的地までの所要時間から逆算すると、夏山であっても日の出前に出発することは決してめずらしくない。限られた時間を有効に使い、焦らずスムーズに行動するためには、事前の心構えとタイムラインのシミュレーションが不可欠だ。朝のあわただしさを頭に入れ、一連の流れをしっかり予習して、ゆとりある出発を迎えよう。

① 出発2時間前に起床

山の朝は作業が多いため、慣れるまでは出発の2時間前起床が理想。慣れてくれば1.5時間でこなせるが、初心者のうちは心にゆとりを持って行動を開始しよう。

② 天気予報チェック

最新の予報で一日の行動計画を確定させる。雨の有無や風の強さ次第で、撤収作業の手順や装備も変わる。

③ 朝食を食べる

エネルギーをしっかり補給する。調理の手間を減らすため、残り物やお湯を注ぐだけの簡単なメニューが理想だ。

④ テント内を片づける

シュラフやマットが濡れていたら結露を拭き、空気を抜く。荷物を整理し、外でパッキングしやすい状態を作ろう。

⑤ テントを撤収する

ペグを抜き、ポールを畳んで本体を回収する。雨なら大型ビニール袋にまとめ、パックの底に収納する準備をしよう。

張り綱は結んでおきます

フライシートの張り綱は結んだまま畳むと、次回の設営がスムーズ。

⑥ ゴミや忘れものを確認

設営場所のまわりを見回り、ペグの抜き忘れや小さなゴミ、忘れものがないかチェック。テント内のゴミ出しも忘れずに。

⑦ パッキングをする

重いものを背中側に配置し、すぐに使う雨具は上部へ。左右のバランスを意識して、パックへきれいに詰めよう。

一連の流れをみて、登山口から撤収までやることの多さが伝わったでしょうか。設営や調理、パッキングは家での練習がおすすめ。今回は基本の流れですが、天候や季節で状況はさまざま。経験を積み、あなただけのベストを見つけてください!

初めてのテント泊登山を終えて

吉野さん
テントを立てる練習が必要と実感しました。慣れたら満喫したいです
テントに触れたことがなかったので、まず立てる練習が必須でしたね! 天気によっても設営しづらい状況にも対応できることが大事だと感じました。テント泊に慣れ余裕が出てきたら、少し荷物を増やして、テントでの時間を満喫したいです!

下田さん
山でのんびりすごした時間は最高でした!まずは短い山行で始めます
準備万端と思っていても、パッキングすると不足に気づきました。やはり「早めの準備」が大切ですね! あと普段の日帰り登山とは荷物の重さが全然違う。歩き方なども意識しなければいけないと感じました。徐々にレベルアップしたいと思います!

 

※この記事はPEAKS[2026年9月号 No.180]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
※最新の情報を直接ご確認の上ご計画ください。

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