
グリーンシーズンのテント泊登山のための寝袋とマットの選び方と寒さ対策
PEAKS 編集部
- 2026年10月06日
INDEX
寝具(寝袋とマット)の快適性は、寝袋の下限温度とマットのR値の組み合わせで選ぶ!
泊りがけの登山において、睡眠は翌日のパフォーマンスを向上させる需要な役目をもっている。寒さで眠れず、疲れが残ったまま……。そんな事態を避けるため、寝袋とマットの選び方をおさらいしよう!
文◉吉澤英晃 Text by Hideaki Yoshizawa
写真◉矢野悠太(P40~41) Photo by Yuta Yano
R値とは…
素材や製品が「どれだけ熱を通しにくいか(断熱性)」を示す指標。保温性とは一切関係なく、数値が高いものほど地面の冷気が伝わりにくい=寒さを感じにくい。現在は国際規格で測定された数値を公表するモデルが多く、製品ごとに性能を比べやすくなっている。
下限温度とは…
体を丸めた状態で眠りながら寒さを感じ始める温度。泊まるテント場の最低気温が0℃なら、下限温度が0℃かそれ以下の低温にも対応する保温性を備える寝袋を選ぶ。後々の山行まで考えて、秋の高山の最低気温に対応するモデルを選んでおくと間違いがない。
寝具選びの素朴な疑問?
Q. そもそも、寝袋は参考温度帯がなぜ3つもあるの?
A. 限界温度に気をつけましょう
寝袋は国際規格で測定された「CONFORT(快適温度)、LIMIT(下限温度)、EXTREME(限界温度)」を表示しているモデルが多い。快適温度はリラックスした状態で眠りながら寒さを感じ始める境となる温度で、限界温度は低体温症のリスクがある温度とされている。
Q. R値は高ければ高いほど暖かい?
A. NO. マット自体には保温性がない
R値が高いマットほどヒート付きの座面のように暖かさを感じると思われがちだが、それは間違い。マット自体に保温性はなく、R値の高いマットを選んだところで体が温まることはない。無雪期であれば、R値が4.0もあるマットを選べば寒さを感じずに眠れるはずだ。
山中での寝泊まりにはどれくらいのスペックが必要?
寒がりな人は保温性の高いモデルを選びましょう
1 山中の気温を予測する
気温は標高が100m上がると約0.6℃下がる。点線は2025年の長野県松本市の各月の平均最高・最低気温。そこから標高3,000m地点の気温を計算したものが実線。

2 気温をカバーするスペックをチェックする
秋(9・10月)の高山で使うことまで想定すると、寝袋は温度下限0℃前後、マットはR値2.0~4.0のものがベター。それ以上の性能はややオーバースペックといえる。


マットの種類は自動膨張式(インフレータブル)、クローズドセル、エアに分かれる。R値にはバラつきがあるが、無雪期で使うぶんにはどれを選んでも間違いはない。最終的には収納性や重量、価格や寝心地が決め手になることが多い。好みと登山スタイルに合わせて選べばOK。
主要メーカーの寝袋から、下限~快適温度が-5℃~0℃前後のものをセレクト。通常、保温性が高いものほど重量は重くなる。同等レベルの保温性をもつモデルであれば、価格や羽毛の撥水加工の有無などを比べて選ぶといい。寒がりな人は「快適温度」を基準にする。
impression ギア大好きライター・吉澤さんと編集・オダマキの寝具談義
オダマキ 吉澤さんが使っている寝袋とマットはどこのモデルですか?
吉澤 寝袋はふたつ持っています。ひとつはモンベルのダウンシュラフ#2(廃盤品。正式名称不明)。2005年くらいに購入。もうひとつは、ウエスタンマウンテニアリングのモノライト。こちらは現行品で、2024年に購入。春や秋など寒さが気になるときはモンベルのダウンシュラフ#2。それ以外はウエスタンマウンテニアリングのモノライトを使っています。モノライトを買うまでは、一年中、モンベルのスリーピングバッグですごしていました。
オダマキ ウエスタンマウンテニアリング……ブルジョワスリーピングバッグ! マットはどうです?
吉澤 マットもふたつ持っていて、適宜使い分けています。サーマレストのZライトソル(ショート)は、軽さを重視するときや連泊の山行などで使用。サーマレストのネオエアーXライトNXT(ショート)は主に雪山で使いますが、1泊程度の夏山で選ぶこともあります。Zライトソルは軽くていいのですが、寝心地がイマイチ。ネオエアーXライトNXTは逆に寝心地がいいのですが、パンクする心配があります。たがいの長所と短所を秤にかけて、山行日数やテント場の地形(土でフラット、石でゴツゴツなど)を考慮して、最終的にどっちを持っていくか決めています。
オダマキ 私はナンガのナノバック540 DXとサーマレストのZライトソル(レギュラー)を使っているんですけど、どうですかね……。寝袋は、真夏で天気も良さそう、標高がそれほど高くなければモンベルのダウンハガー♯5を使っています。ただ、「予想に反して寒かったら……」と考えると心配なのでインナーシーツ、エマージェンシーを兼ねた寝袋カバー、厚手のフリースも持って行っています。
吉澤 ……。それが小田巻さんの荷物が増えて重くなっている原因じゃないですかね。まずは上記の寒さ対策をひととおり試してみることをおすすめします。
オダマキ あと、寝心地とトラブルがない確実性からクローズドセルマット1択だったんですが、先日、カモシカスポーツに行ったときにニーモのエアマットを見たらR値が5・5もあって驚きました……。
吉澤 R値は暖かさではなく、冷気をどれだけ遮断できるかの数値なのと、エアマットはテスト時にR値が高く出やすいと聞いたことがあるので、それがすべてではないというか。
オダマキ 結局、好みってことですかね……。一度エアマットを買って試してみようかなぁ。
できるだけお金をかけずに実践できる、寒さ対策Tips
1 湯たんぽをつくって寝袋に入れる

沸かしたお湯を水筒に注いで湯たんぽをつくり、それを寝袋に入れるとぬくぬく寝られる。お湯の温度が高すぎると火傷する危険があるので、湯加減はほどほどに。熱さを感じる場合はタオルや靴下などに包んで使おう。ハードボトルもありだが、体に触れる面積の多いソフトボトルを使い、空気を抜いた状態で胸元に置くと◎。
2 マットの下にバックパックを敷く

地面に体温を奪われる現象も寒さを感じる大きな原因。マットのほかに、体の下になにかを挟むと熱損失を軽減できる。バックパック以外に、使わないスタッフサックやエマージェンシーシートなども考えられる。バックパックを敷くときはフレームの破損に注意。背面がゴツゴツしていないモデルが向いている。
3 ウエアのフードやビーニーをかぶる

体に露出している箇所があると熱はそこから失われてしまう。それは頭も例外ではなく、熱損失を防ぐためにフードやビーニーをかぶって眠るといい。ウエアにひとつでもフード付きを選ぶようにすると寒さ対策に有効だ。マミー型のスリーピングバッグには標準でフードが付いている。寝袋とウエアのフードで頭をカバーしよう。
4 持っているウエアをすべて着込む


登山のレイヤリングどおりにウエアを用意していれば、着ているものを含めて、手元にはベースレイヤー、ミッドレイヤー、アウターレイヤー、サーマルレイヤー(保温着)があるはずだ。寒くて眠れないときは、それらをすべて着込んで寝袋に入ろう。下半身も同様に雨具やそのほかに防寒着を持っていればすべて着込む。熱くて寝苦しければ1枚ずつ調整しよう。レインウエアも防寒具として大活躍! まぁ、モコモコにはなりますが……。
5 厚手の靴下に履き替える

着替えのなかに靴下の替えを入れている人は多いだろう。それをあえて厚手のものにして、足元が濡れたときに履き替えるだけでなく、防寒アイテムとしても活用しよう。裏地が総パイルで締め付けが少ないものがおすすめ。厚手の靴下を履いても普段の登山靴で支障なく歩けるか確認しておくと完璧だ。
6 ネックゲイターで首を温める
首には太い血管がとおっていて、温めると全身の血流がよくなるといわれている。そこで役立つのがネックゲイター。上着を羽織らなくてもネックゲイターを着けただけで寒さが和らぐほど効果がある。ネックゲイターは冬も活躍する万能アイテム。とても軽く重荷にならない。

7 バックパックの中に足を入れる

寒い夜、足先の冷えに悩まされて眠れないという人は多いはず。そんなときは、寝袋ごとバックパックの中に足をイン。外気と遮断されてバックパックの中に熱が溜まるので、足先の冷たさが多少なりとも軽減される。バックパックに足を入れると、結露が発生したテントの壁に足元が触れなくなり、寝袋が濡れるのを防ぐ効果もある。
8 テントのモデルを見直してみる


冷気はメッシュパネルからテントの中に流入する。そのため、ダブルウォールならインナーテントにメッシュパネルが使われていないか、使われていても異なる素材のパネルで閉じられるモデルのほうが寒さを感じにくい。ただし、メッシュパネルが少ないモデルは内側が蒸し暑くなりやすい。とくに最近の軽量モデルはメッシュパネルの面積が少ないものが多いので、気に留めておくといい。
極端に保温性が低い寝袋を持っていたら話は別だが、上記で紹介した選び方に忠実であれば寒さが気になることはほとんどないだろう。それでも震えを感じてしまう夜があったら、周りにあるアイテムを総動員して冷えを防げないか試してみよう。
※この記事はPEAKS[2026年9月号 No.180]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
※最新の情報を直接ご確認の上ご計画ください。
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文◉吉澤英晃 Text by Hideaki Yoshizawa
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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