
国内最大級のマウンテンバイクシリーズ戦「ENS」のサポーターたち ~vol.2 KAYABA~
Bicycle Club編集部
- 2026年09月22日
国内最大級のマウンテンバイク「エンデューロ」シリーズ戦「ENS(イーエヌエス)」。11月14日、15日開催の富士見高原戦を前に、本シリーズを支えるサポーターのショップやブランドに注目。第二弾はMTB用サスペンションブランド「カヤバ」だ。引き続きシマノMTB関連情報の発信を目的とした「ENSマガジン」から紹介する。
カヤバが挑むMTBサスペンション
モータースポーツで培った技術を、エンデューロの現場へ

モトクロスやスーパークロスの世界で「カヤバ」といえば、性能への信頼で知られる存在。そのカヤバが近年、マウンテンバイク用サスペンションの市場に本格参入した。今季のENSの会場には、フロントフォークに加えてリアショックまでカヤバ製で組んだトレック/スペシャライズドのE-MTB試乗車が毎戦並び、来場者の注目を集めている。開発を手がけた野口さんに、参入の経緯と技術の中身をうかがった。
20年温めてきた、個人研究の結実

カヤバとMTBの関わりは、実は20年以上前にさかのぼる。野口さんが入社した2003年から2006年ごろ、ホンダ(HRC)のダウンヒルチームへの供給という形で一度取り組んでいた(奇しくもこの頃のHRCのMTBファクトリーライダーは、現在のENS代表の内嶋亮さん)。しかしホンダのプロジェクト終了とともに、その活動も一度は途絶えてしまう。

それでも野口さんは、この分野への情熱を捨てなかった。当時の上司の許可を得て、いわば「個人研究」として細々と開発を続けていたという。
「ホンダさんの活動が終わって会社としては自転車から離れたんですけど、僕自身が好きだったので、ずっと気にして一人で開発を続けていました。予算は一応ついていたものの、量産を目指すような目的もなかなか見えないなかで、細々と続けてきた感じです。それが5年ほど前、時流が整いそろそろやれるかもしれないと考えることができるようになったのです。実際に本格的にやってみたら、性能も結構良かった。それで真剣に取り組むことにしました」
E-MTBがもたらした追い風

再始動のきっかけは、市場の大きな変化、つまり「E-MTBの普及」だった。モーターとバッテリーを積んだE-MTBは車重が増し、車体の特性がオートバイに近づく。当然サスペンションに求められる性能も変化する。
「E-MTBで車重が重くなると、サスペンションの剛性も減衰力も高いものが求められますし、バネ荷重も高くする必要がある。僕らが設計した倒立フォークは重くなりますが、逆にモーターのアシストがあるので、多少重くてもライダーは気にならない。そこは性能重視で、E-MTBに合うものを作れると考えました」
会社として市販製品のラインナップを増やしたいという事情も、この動きを後押しした。オートバイ用の高価なサスペンションに対し、自転車向けなら手を出しやすい価格帯で市販製品を展開できる。まさに市場の変化と社内のニーズが噛み合った形だ。
モトクロス由来の技術を自転車に

カヤバのMTBサスペンション最大の特徴は、モータースポーツで培った技術をそのまま注ぎ込んでいる点にある。構造としては「モトクロッサーYZ85クラスのサスペンションを短くして落とし込んだようなもの」。オープンカートリッジ式のダンパーにコイルスプリングを組み合わせ、性能を最優先している。
「減衰力が安定して、必要な減衰力を精度よく出せる。モトクロスで使っているバルブを入れているんです。マウンテンバイクではエアサスが主流ですが、あえてコイルを選びました。重量が増える、ライダーの体重に合わせてバネを変えなければならない、というデメリットはありますが、性能を重視しました。モトクロス用も一時はエアサスに移行していましたが、今はコイルが主流になっており、同じ構造です」
フォークに倒立式を採用しているのも、明確な狙いがあってのこと。ねじれ剛性を高められること、そしてインナーチューブにカバーを付けられること。この2点が決め手となった。「倒立だと傷が付きやすいと言われることもありますが、逆にカバーを付けられるので、傷が付きにくい。そこは安心かなと」。カヤバの読みでは、市販オートバイの6~7割がすでに倒立化しており、今後10年で正立フォークは数を減らしていくという。
ターゲットは自分で山を登って遊ぶ人。手の届く価格を意識

「自分で山を登って遊ぶ人をターゲットにしています。タイヤがしっかり路面を捉えて、安心して走れて、結果として楽しく走れる。そこを狙っています。ダブルクラウンはどうしても重く、押し込みが重くなってしまう。シングルクラウンにすることで軽くなるという利点もあります」
価格はフロントが27万4780円(税込)、未発売のリアが10万円強を目指しているとのこと。他社の高性能サスペンションが20万円近くすることを考えれば、性能を担保しながら手の届く価格を意識した設定だ。「みなさんに使ってほしいので、価格は意識しながら」と野口さんは語る。
認知度という課題、そして世界へ

課題として野口さんが挙げたのは、MTBユーザーへの認知度。オートバイの世界では絶対的な信頼を得ているカヤバだが、自転車ユーザーにその名が浸透しているとは言い難い。「感覚で言うと、10人中3人がモトクロスでのカヤバを知っている、というくらい。全く知らない人も結構多いんです」。
一方で、海外に目を向けると状況は異なる。モトクロス人気の高い地域ではカヤバの認知度も高く、「KTMのサスペンションの中にカヤバが入っている、と噂になるくらい」信頼を得ているという。

国内でも、この確かな性能を武器に、エンデューロの現場から少しずつファンを増やしていく——カヤバの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
ENS 2026 第4戦(最終戦)開催概要
・日程:2026年11月14日(土)、15日(日)
・会場:富士見高原(長野県諏訪郡富士見町)
・主催:株式会社ダイナコ
・大会公式サイト:https://ensjapan.net/
- BRAND :
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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