
ヒーリーやシモンズら世界トップが集結!岡本隼や石橋学の引退発表に揺れた熱狂の前夜祭|宇都宮ジャパンカップ
せいちゃん
- 2026年10月17日
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日本中、そして世界中のサイクルロードレースファンが待ち望んだ週末がやってきた。「SUBARU presents 2026 宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース」が10月16日、栃木県宇都宮市のオリオン市民広場(オリオンスクエア)で開催されたチームプレゼンテーションで華々しく幕を開けた。
市制130周年の宇都宮に国内外20チームが集結 橋本聖子会長の電撃復帰宣言も

今年で33回目を迎えたアジア最高峰のUCIプロシリーズレース。宇都宮市制130周年の記念すべき節目となる今大会には、世界最高峰のUCIワールドチーム5チーム、世界の第一線でしのぎを削るUCIプロチーム5チーム、スロベニアの名門育成UCIコンチネンタルチーム1チームの海外勢11チームが来日。さらに国内屈指のUCIコンチネンタルチーム7チーム、若手精鋭が集う日本ナショナルチーム、そして土曜のクリテリウム限定で結成されたドリームチーム「クリテリウム・スペシャル・ライダーズ」を加えた計20チーム・総勢116名の選手が集結した。

ステージ前を埋め尽くした大観衆の熱気の中、オープニングセレモニーには主催者を代表して佐藤栄一宇都宮市長、そして公益財団法人日本自転車競技連盟(JCF)会長および日本オリンピック委員会(JOC)会長を務める橋本聖子氏が登壇した。佐藤市長が「市制130周年の宇都宮で、選手たちに熱い大声援を届けてほしい」と語れば、橋本会長は「宇都宮に根付いた自転車文化は日本の誇り。来年日本で開催されるワールドマスターズに向けて、私自身BMXレーシングで現役復帰を決意しました!」とまさかの電撃サプライズ宣言を放ち、会場は大きな歓声と笑いに包まれた。

おなじみの解説陣である今中大輔氏、栗村修氏、そして実況のMCアリー氏による軽妙な見どころ解説でボルテージが最高潮に達したところで、いよいよ20チームによるチームプレゼンテーションがスタートした。

トラック&競輪の怪童が集結 地元を背負うスペシャルライダーズと若き日本代表

トップバッターとして登壇したのは、土曜日の「宇都宮ジャパンカップ・クリテリウム」のためだけに特別編成されたクリテリウム・スペシャル・ライダーズ。
清水裕輔監督率いるチームには、地元・栃木支部所属のトップ競輪選手でファン投票1位に輝いた眞杉匠(JPCU栃木)をはじめ、一丸尚伍(JPCU大分)、近谷涼(JPCU富山)、沢田桂太郎(スパークルおおいたレーシングチーム/JPCU大分)、金井健翔(スパークルおおいたレーシングチーム/鹿屋体育大学)、そして地元ロードレースファンから絶大な支持を集める阿部嵩之(ヴェロリアン松山)が勢揃い。

特製ジャージには宇都宮餃子やとちおとめがデザインされ、阿部が「見てください、このデカい男たちを!彼らのスピードで世界のワールドツアー勢に対抗します」と語れば、眞杉は「普段の競輪場ならもっと大きな声援を浴びるんですけどね(笑)。毎年お客さんとして見ていた舞台を全力で楽しんで走りたい」と笑顔を見せ、場内を大いに沸かせた。

続いて登場した日本ナショナルチームは、宮崎景涼監督のもと平均年齢20.5歳という極めてフレッシュな6名(馬場慶三郎、島崎将男、新藤大翔、渡辺一気、野嵜然新、風間大和)を編成。
ツール・ド・九州や全日本選手権でも存在感を示した若武者たちを代表し、馬場は「世界のトップ選手たちと走れる貴重なチャンス。若さを武器にアグレッシブに攻めたい」と宣言。2歳の頃から自転車に乗ってきたという野嵜も、憧れのスタートラインに立てる喜びを堂々と語った。

アジアの雄と国内トップチームのプライド 岡本隼と石橋学が明かしたラストラン
国内外で実績を積み重ねる強豪コンチネンタルチームたちも、研ぎ澄まされたコンディションをアピールした。

前週のマイナビ ツール・ド・九州2026でワールドツアー勢を破り佐世保クリテリウムを制したルーク・バーンズ(オーストラリア)を擁するヴィクトワール広島は、Jクリテリウムツアー2連覇中の主将・孫崎大樹が「昨年は手首骨折の悔しさを味わった。今年は万全なのでクリテリウムの勝利を狙う」と自信を漲らせ、バーンズも「再びアタックしてファンをサプライズさせたい」と不敵な笑みを浮かべた。

勢いに乗るVC福岡は、過去ジャパンカップ2位の実績を持つベテランのベンジャミ・プラデス(スペイン)に加え、マイナビ ツール・ド・九州2026で山岳賞を獲得し「リトル・ベンジャ」と慕われる若手ジェラルド・レデスマ(スペイン)、全日本元王者の山本大喜、スプリント好調の本田晴飛らが登壇。

イタリア拠点でシーズンを戦い抜き、今季UCIプロチーム並みの快進撃を見せたチームUKYO。大分クリテリウム覇者の寺田吉騎が「ヨーロッパで積んだ経験とスピードを活かし、明日はチームのスプリンターとして全力を尽くす」と語った直後、ステージは厳粛かつ温かい空気に包まれた。

数々の国際舞台を戦い抜いてきた33歳のベテラン、石橋学が今シーズン限りでの現役引退を発表。このジャパンカップが正真正銘のラストレースとなることが明かされた。
「今まで出会ったすべての人、支えてくれたファンに感謝を伝えたい」と言葉を紡いだ石橋に対し、かつてチームをアドバイザーとして支えた今中大輔氏から労いと敬意を込めた花束が贈呈されると、会場からは割れんばかりの拍手と惜しみない歓声が降り注いだ。

伝統の青いジャージをまとうシマノレーシングは、野寺秀徳監督が「餃子を探しに行って不在」というお約束(?)のハプニングで笑いを誘いつつも、風間翔眞キャプテンを中心に団結力を誇示。クリテリウムのエースを任された日野泰静は「狙うのは中間スプリントではなくゴールの頭だけ」と言い切り、クライマーの山田拓海は「日曜日はワールドツアーの選手たちを引きずり回したい」と大胆な下克上を誓った。

トマ・ルバ新監督が率いるキナンレーシングチームは、世界選手権を走った若き橋川丈や来季、VC福岡への移籍が発表された新城雄大が好調をアピール。元ワールドツアーレーサーのレイン・タラマエ(エストニア)や山本元喜ら歴戦の猛者とともに、盤石のチームワークで上位進出を期す。

そして、地元ファンの大歓声に迎えられたのが「赤備え」のAstemo宇都宮ブリッツェンだ。マスコットのライト・アームストリングくんがハロウィン仕様で登場する中、今季Jプロツアー年間個人総合優勝を果たしたエース岡篤志は「九州でも最終ステージ6位と調子は上がっている。このメンバーで走る最後のレースになるかもしれないという思いを胸に、チーム一丸で挑む」と決意表明。まもなく43歳を迎えるレジェンド増田成幸も「何回走ってもこのコースはえぐい。でもやれる準備は100%やってきた。表彰台を狙う」と力強く語り、地元ファンの胸を熱くさせた。

続いて登壇した愛三工業レーシングチームでは、ひときわエモーショナルな時間が流れた。全日本チャンピオンジャージに身を包んだ留目夕陽が「ヨーロッパのワールドツアー勢と力勝負ができるのが本当に楽しみ」と充実感を漂わせた後、視線はチームの絶対的エーススプリンターへと注がれる。
去る10月14日、チーム公式SNSを通じて今シーズン限りでの退団と現役引退を発表していた岡本隼。大学在学中の加入から10年間にわたり愛三の看板を背負い続け、ジャパンカップ本戦でも2度アジア最優秀選手賞に輝いた名スプリンターが、発表後初めて大勢のファンの前に立った。
ラストランへの思いを問われた岡本は、万感の思いを込めてマイクを握った。
「本当に多くの方に今まで支えられて歩んできた道だと思うので、感謝を込めて明日のクリテと日曜日のロード、すべてを出し切って有終の美を飾りたいと思います」

温かい拍手が広がるステージに、サプライズで駆け寄ったのは日本大学時代からの後輩であり、10年間にわたり苦楽を共にしてきたライバルの草場啓吾(キナンレーシングチーム)だった。岡本のトレードマークであるピンク色を基調とした花束を抱き合いながら手渡すと、草場は「10年間共に活動してきて、辛いときはやっぱり岡本先輩の存在が大きかった。最高の経験をさせてもらいました」と言葉を詰まらせた。固い絆で結ばれた盟友同士の抱擁に、会場中から惜しみないエールが送られた。

カンチェラーラ率いる新興勢力から合計85歳のレジェンドコンビまで!熱きUCIプロチーム

海外勢の口火を切ったのは、スロベニアのポギチーム・グスト・リュブリャナ。
トーマス・ポリャネック監督は「前半から勇気を持って逃げ、後半はビッグボーイズと勝負する」と宣言。昨年クリテリウム8位のニコラス・ゴイコヴィッチ(クロアチア)も「非常にいいコンディション。ワールドツアーの選手たちに挑む」と野心を覗かせた。

クラシックの伝説ファビアン・カンチェラーラが立ち上げたスイスのチューダー プロサイクリングチームは、洗練された漆黒のウェアで登場。モルガン・ラモワソン監督が「クリテリウムはスプリンターのルク・ヴィルトゲン(ルクセンブルク)で勝負する」と語れば、登坂力に定評のあるハネス・ウィルクス(ドイツ)は「パンチの効いた古賀志山の登りは自分向き。日曜日のロードが楽しみ」と笑みを見せた。

マイナビ ツール・ド・九州2026でチーム総合優勝を果たしたフランスのチーム トタルエネルジーは、ツール・ド・フランスで2年連続総合10位に入った世界トップクライマーのジョルダン・ジェガット(フランス)を筆頭に勢いそのままに来日。ジェガットが「14回登る古賀志山は、クライマーの自分にとって最高のステージ」と語れば、九州個人総合3位のアレクサンドル・ドゥレトル(フランス)もチームの士気の高さを強調した。

日本のファンからひときわ大きな声援を浴びたのがソリューションテック・NIPPO・ラーリだ。チームの主将を務める42歳の新城幸也、そして今年現役復帰を果たした43歳のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)という、合計85歳の超人ベテランコンビが登壇。
新城が「ポッツォヴィーヴォが加わったことで、チーム全体に『明確に結果を出せる』という最高の雰囲気が生まれている」と信頼を寄せれば、ポッツォヴィーヴォも「一度引退したが、トレーニングの数値が良く、もう一度トップレベルで走りたいと思った。日曜日の本戦で結果を残したい」と衰え知らぬ情熱を語った。

全員が1型糖尿病と闘いながら世界を転戦するチーム ノボ ノルディスクは、実に11年連続の出場。9回目の出場となる大ベテランのダビ・ロサノ(スペイン)や、昨年クリテリウムで表彰台に登ったフィリッポ・リドルフォ(イタリア)らが並び、「自分たちにとって日本は特別な場所。今年もスプリントと逃げで結果を出したい」と温かいエールに応えた。
強行軍を跳ね返す情熱 キャプテン・アメリカとメガスターたちの激突へ
プレゼンテーションのクライマックスを飾るUCIワールドチームの登場は、まさに波乱とドラマの連続となった。

ロット・アンテルマルシェは、今季限りでチームを離れるレナルト・ファンイートヴェルト(ベルギー)とゲオルク・ツィンマーマン(ドイツ)がダブルエースとして君臨。ファンイートヴェルトが「育成時代から7年間過ごしたチームでのラストレース。悔いのない走りをしたい」と語れば、明日25歳の誕生日を迎えるラルス・クラップス(ベルギー)への祝福ムードも重なり、チームの結束を見せつけた。

クリテリウム6連覇中、前人未到の7連覇に挑むリドル・トレックは、落車や体調不良によりクイン・シモンズ(アメリカ)、ジュリアン・ベルナール(フランス)、サム・オーメン(オランダ)、マッテオ・ソブレロ(イタリア)の4名での出走となった。ベルンハルト・アイゼル監督が「4人になったがベストの精鋭。クリテ7連覇は簡単ではないが、我々にはキャプテン・アメリカがいる」と胸を張ると、全米王者クイン・シモンズは「明日は完全にレースモードに切り替える。序盤から行くか?いやいや、まだ13周もあるから冷静に走るよ(笑)」と堂々たるオーラを放った。

バーレーン・ヴィクトリアスもまた、体調不良による欠場を乗り越え4名体制で臨む。若手スプリンターのアレッサンドロ・ボルゴ(イタリア)が「明日は集団スプリントに持ち込んで勝ちたい」と語り、実力者アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー)は「明日はボルゴをアシストし、日曜日の本戦はアントニオ・ティベーリ(イタリア)とともに最高の結果を狙う」と戦略を明かした。
そして会場を最も驚かせ、最大の拍手で迎えられたのが、直前のフライトトラブルを乗り越えて成田・羽田からオリオンスクエアへと直行した3チームだ。

ステージ開始のわずか1時間半前に到着したチーム ジェイコ・アルウラーは、マシュー・ヘイマン監督のもと完璧な戦闘体制で登壇。今年の世界選手権ロードレースで銀メダルを獲得したスーパースター、マイケル・マシューズ(オーストラリア)は「両腕骨折という大怪我を乗り越えて掴んだ世界選2位だった。イタリアのレースを経て調子はキープできている。日本のファンの前で最高のパフォーマンスを見せたい」と語り、昨年クリテリウム2位のマウロ・シュミット(スイス)も「日曜日はマイケルという大本命がいる。チームで勝利を掴み取る」と力強く続いた。

バイクの到着が遅れるトラブルに見舞われながらも、揃いの赤いチームウェアで駆けつけたコフィディス。セバスチャン・ドゥマルベ監督が「長旅の疲れはあるが、昨年8位のサム・メゾノブ(フランス)を中心に日曜日のロードで表彰台を目指す」と語れば、今秋のクラシックで好成績を連発しているメゾノブ自身も「非常にいいコンディションを保っている。リーダーとして結果を残したい」と気迫を漲らせた。

そして大トリを務めたのは、会場中を埋め尽くしたピンク色のグッズと大歓声に迎えられたEFエデュケーション・イージーポストだ。
バイクレスの強行軍を感じさせない満面の笑みで登壇した選手たちの中央には、現代ロードレース界屈指の超攻撃的アタッカー、ベン・ヒーリー(アイルランド)の姿があった。
長旅の疲労を問われつつも、ヒーリーはマイクを手に「日本のファンが掲げてくれるピンク色を目にするのは本当に最高だ。日曜日のレースでは、このピンクのジャージをとにかく目立たせたい」と、代名詞である超ロングレンジアタックを予感させるコメントを残し、会場の熱気は最高潮に達した。
また、大怪我を乗り越えてプロ契約を勝ち取り、チームの主力を担うまでに復活したベテランのミケル・ヴァルグレン(デンマーク)も「この素晴らしいチームで日曜日、勝ちを狙いにいく」と力強く宣言した。
最速の街頭バトルから古賀志山の死闘へ いざ、熱狂の2日間が開幕!
全20チームの登壇が終わり、オリオンスクエアを包んだ熱気と興奮は夜が更けても冷めることはなかった。
引退を決断した岡本隼や石橋学の熱き魂、世界最高峰のメガスターたちが放つ圧倒的な存在感、そしてアクシデントを乗り越えて宇都宮へと辿り着いたチームたちのプロフェッショナリズム――それぞれの想いが交錯する中、戦いの舞台は市街地を時速60km超で駆け抜ける土曜日の「クリテリウム」、そして古賀志山の激坂を14回越える日曜日の「本戦ロードレース」へと移る。
週末の宇都宮の天候は2日間ともに秋晴れの予報。最高峰のスピードとドラマが織りなす「SUBARU presents 2026 宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース」の火ぶたが、いよいよ切って落とされる。
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 文:相原晴一朗 写真:2026宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース
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PROFILE
せいちゃん
稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている
稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている



















