
エントリー1070名の“フジイチ”、雨も青空も味わった一周に「また走りたい」の声|スルガ銀行 presents 富士山1周サイクリング2026
Bicycle Club編集部
- 2026年11月07日
INDEX
2026年10月25日、富士山の麓をぐるりと一周するサイクリングイベント「スルガ銀行 presents 富士山1周サイクリング2026」、通称“フジイチ”が開催された。静岡・御殿場と山梨・鳴沢を起点とする3つの種目に1070名がエントリー、当日は864名のサイクリストが参加。この日は、静岡県側の霧と雨の中でスタートし、山梨側では真っ青な空が広がるなど、一周の中で表情を変える天気となった。富士山は雲の向こうに控えていた時間が長かったが、それでも走り終えた参加者からは、一様に「完走できて楽しかった、また走りたい」との声を聞く。天気が移り変わる中でも、ロングライドがこれほど愛される理由を、御殿場スタートのコースに沿って追った。
あこがれのフジイチは仲間とともに
霊峰富士。この独立峰の円錐を見れば誰もが心惹かれる。そんな富士山の麓を日中に一周するのが“スルガ銀行 presents 富士山1周サイクリング2026”。
自転車乗りならば誰でも一度は富士山麓を一周したくなるだろう。このイベントは、その“フジイチ”の冒険をエイドステーションやサポートライダーの援助を受けつつ、各地から参加する見知らぬライダーたちとも一緒になって走れることが魅力の一つだ。
海峡横断や湖一周コースと違い、実のところ“フジイチ”のコースは山麓ゆえに目当ての富士山を望める場所も限られ、さらにはアップダウンの連続とあって、一日で終えるにはややハードなものだ。
しかし、走り終えた参加者からの多くは一様に、あいにくの天気だったにも関わらず「走って良かった、また参加したい」との声がぞくぞくと聞かれたのだ。この“フジイチ”の魔力とはいかに。
設定コースは3つ
設定された種目は3つ。富士山麓を反時計回りに一周する「富士山1周」(約115.5km)、それに加え富士五湖にも寄る「フジイチプラス」(約171.5km)、御殿場から鳴沢村までの「御殿場発ワンウェイ」(約53km)が設けられた。富士山1周は静岡・御殿場と山梨・鳴沢の2拠点からスタートでき、御殿場スタートの参加者は717名(申込890名)、鳴沢スタートの参加者は147名(申込180名)。エントリーは計1070名、当日は864名のサイクリストが、富士山麓を一斉に巡った。
今回は御殿場から一周するライダーを追うようにコースをトレースし、各所で撮影、参加者の声を聞いた。
ここでは富士山1周・静岡発(約115.5km)を紹介する。
霧の中の樹空の森は時折雨も

左からイベント主催者・ルーツ・スポーツ・
御殿場側の出発点は標高634mの「富士山樹空の森」。
朝6:00、霧の中ゆえにまだ薄暗い中、

霧、そして雨の中、レインウエアに身を包んだライダーが歩き出す。スタートゲートから、まずはゆっくり徒歩で押しながらのスタート

樹空の森の広場とステージがスタート地点。ステージ上の屋根は準備や待機にこんな天気に有利な施設

雨に慣れるよう下り路を進む。早朝ながら地元の方々も道路へ出て声援を送っていた
序盤の雨、そして登りに心折れた⁉

御殿場ならではの光景。陸上自衛隊96式装輪装甲車がライダーをサポート。ではなく、車幅のある装甲車がライダーを追い抜かない思いやり…の光景。
晴れていれば左手に富士の峰が所々で望めるはずの“ぐるり富士山風景街道”を国道138号水土野ICまで下ると、最初の難所で山梨との県境、籠坂峠への上りが始まる。
エイドステーションの補給食を目指して

「国道からエイドまでの登りがきつかった」とは高木さんご一家のお父さん。娘さんとは一昨年に続いての参加である常連さん
雨の登りで「堪えました…」とは、その登り途中にある最初のエイドステーション、須走多目的広場で休憩の高木さんご一家。昨年はエントリーするも悪天候で中止となり、楽しみにしていた今年も雨に打たれながら、ご夫婦と娘さん息子さんの4人で東京からの参加。

小山町銘菓で飴屋謹製のどら焼き「金太郎の熊どら」が補給食として配られる。スタート約10km地点でのショートブレイクにはちょうどいい

籠坂峠を迎えるころには雨も止んだものの、序盤からのウエット状況の中、黙々とペダルを漕ぐ一様のクライマー姿を見るに、このイベントの象徴的シーンを目の当たりにした思いだ。
風下の山梨側は見事な晴れ間
籠坂峠を越えると、山中湖畔側までは138号線を離れ、比較的交通量の少ない旧道を選ぶ。この日、風下にあたる富士山頂を起点にした北東に位置するここで、ようやく雲が切れ始めた。しかし、富士の峰は僅かにその斜面を見せるに留まり、頂は雲に隠れていた。
旧道沿いの住居区を抜けると再び138号線に合流し、なだらかな下り基調で富士河口湖町へ。北進するとさらに晴れ間が広がり、真っ青な空が目前に現れた。
富士山を背にした河口湖への下り路、35km地点の富士河口湖町役場駐車場には2つ目のエイドが設置される。ここで振舞われていたのは山梨の郷土料理“ほうとう”。専門店・歩成(ふなり)の皆さんが出張調理で作る“ほうとう”はこれまでの雨の登りと、それに続く濡れたままでの下り路で冷えた身体に染み入ると、多くのライダーに好評であった。


「このタイミングでの温食はありがたい!」。できたてのほうとうを口にしては「次なるステージへのエネルギー補給!」と、感嘆の表情を浮かべるご一行は神奈川県川崎市の和菓子店「新岩城」に集う自転車仲間たち。
強い南西風が吹き始め、富士山風下の上空のつるし雲の上からようやく日が差し始めた。
河口湖大橋を北に渡り、湖畔北岸を西に進む。コキアで有名な大石公園あたりは好天で時間帯もあって、さすがに交通量が増え渋滞が。

大石公園を過ぎるとクルマも徐々に減っていった。湖北岸を走り終えると138号線まで戻り、周回コースへと復帰する。
中間地点にあたる53kmの鳴沢村活き活き広場が3つ目のエイドステーション。ここでは、鳴沢菜を使った“鳴沢菜まんじゅう”とブルーベリージャムの“あまずっパイ”が配られる。

茨城県ひたちなかから参加の3人組は、個人的にフジイチを走ったことはあるものの、今回は楽しみながら走れるようイベントに参加したとのこと。序盤と終盤の雨にもかかわらず「走り応えがありました!」とは普段からの鍛錬がにじみ出る。「来年も出られたら参加します!」とはリーダーの男性。

鳴沢村活き活き広場のこの芝広場の開放感は、疲れの溜まった脚を伸ばすにはまさに理想的な空間。目の前には、雄大な裾野が広がっていた。

西斜面を覆う雲が気がかり
ここから進む南西方向の裾野には雲がびっしりと着いているのが気がかりだ。

じりじりと登りながらのうねり道が続く富士宮鳴沢線は樹海の中道。ここも富士山麓が見せる一面だ
ひばりが丘交差点で138号線を後に富士宮鳴沢線に入ると、そこは樹海の森を抜ける神秘的な一本道。長くはないのだが変わらぬ景色に吸い込まれるようだ。
大室山の脇を抜けると朝霧高原が眼下に広がる下り路に。南西風を受ける富士の峰には、雲が湧き立っていた。
74km地点の“富士ミルクランド”が4つ目のエイド。ここでは富士宮のソウルフード、弁当屋“さくらふじ”が作る“富士宮やきそば”が配られた。

富士の西斜面にひらける富士宮。朝霧高原に位置する富士ミルクランドが4つ目のエイドステーションだ。

富士宮やきそばで小憩をするお二人に話を伺う。横浜市の自宅を起点に普段から親子でサイクリングを楽しんでおり、自身の力量にあったイベントを探していたところに、このフジイチを知って申し込んだとのこと。フィニッシュ後の御殿場では「コースや天候は辛かったけど、完走した喜びの方が大きい」と達成感を味わえたことを話してくれた。
霧の樹海と朝霧高原を行く
ここから89km地点の“村山浅間神社”の給水ポイントまでは細かなアップダウンはあるものの、平坦基調がつづく。
左手にはせり上がる山の気配を感じながら、上空を雲に包まれた静かな道が続く。
コースも後半に入るが雲の沸く南斜面となり、終始、小雨が降る霧の中を走る。そのウエット路面での走行ではパンクも増えていたようだ。青いビブを着るサポートライダーだけでなく、参加者同士でトラブルを解決する助け合いの光景が見られるのもロングライドイベントの神髄。


もうフィニッシュが頭に浮かぶ100km地点の“富士山こどもの国”には最後となる5つ目のエイドステーションがある。
ここで振舞われたのは富士市のご当地グルメ“つけナポリタン”。富士市でつけナポリタンをメニューに掲げる店の有志“富士つけナポリタン大志館”の皆さんが出張調理を行っていた。濃い霧の中、最後のお楽しみとばかりに温かい塩味のある洋風麺がライダー達に喜ばれていた。



「学生時代にトライアスロンをやっていましたが、少しスポーツから離れていたので今回は自身の力試しで参加しました」とは、輪行でやってきては100km以上をこの軽装単独で走り切った東京のOL、淺賀さん。今度はレースなどの競技にも挑戦したい!と

二人揃って「完走できて、つけナポリタンも美味しかったし、河口湖あたりは晴れていたので楽しかったです!」とは高校生の吉田さんと新井さん。同じ高校に通う先輩後輩の仲。ここまで来れば完走同然と「お母さんのクルマで帰ります、来年も出たいです!」と
フィニッシュへ、霧の中の最後の登り

晴れていれば、野原の向こうに佇む富士の峰を望めるが、天気は相変わらず。本降りとはならないが高い地点では霧に囲まれる。そんな霧中のルート上にようやく樹空の森までの標識が現れ、最後の踏ん張りを出し切る気にさせる。
そして最後の登りを上がり切り、朝と同じく霧の中の樹空の森に帰って115.5kmの一周を達成。午前中に見た山梨側の青空を思い返しながら迎えるゴールは、グループごとのスタートの賑やかさとは違い、三々五々ライダーが帰ってくる穏やかな雰囲気だった。
「完走して楽しかった!」

フィニッシュライダーには、“富士山チョコパン”と“すそのんまんじゅう”が手渡され、その空腹の足しにされていた。
こうして、フジイチ一周を参加ライダーとともに追った。話しかけた参加者のほとんどが見事なまでに、獲得標高1000m以上あるコースの手ごたえに加え、雨や霧の中でも、常に前向きに臨んでいた。
参加者のほとんどが整備されたロードバイクで、雨にも寒さにも備える着こなしだったことを考えると、コースの難度に合ったレベルであったことは間違いないだろう。
行程中、そして走り終えてからもライダーを高揚させる魅力とは、霊峰ゆえの魔力なのかもしれない。次回は、その姿を見せる褒美をライダーたちに与えてもらいたいものだ。

輪行いらずで現地へ──御殿場線初のサイクルトレイン

このイベントに合わせJR東海は、浜松駅から御殿場駅までの往路をイベント前日の24日に、御殿場駅から浜松駅までの復路を当日の25日にサイクルトレインを走らせた。2両編成の313系はロングシートの1辺を参加者に提供する形で急行券・指定席券を販売。手すりに自転車を固定し、その横を悠々と占有できる仕様で、当日でも空きがあれば乗車が可能であった。
当日は「雨が降っていたので急遽利用した」という利用者もいた。こうした輪行不要の列車増発の企ては今後に期待を感じさせてくれる、と乗客である参加者に歓迎されていた。駅長をはじめとした駅員さんの見送りでサイクルトレインが西へ発車。こうして帰路に着くまで楽しめる富士山1周サイクリングとなった。

スルガ銀行 presents 富士山1周サイクリング2026 開催概要
開催日:2026年10月25日(日) ※前日10月24日(土)受付
会場(拠点):
・静岡拠点:富士山樹空の森(静岡県御殿場市)
・山梨拠点:鳴沢村活き活き広場(山梨県鳴沢村)
種目・コース:
・フジイチプラス(約171.5km)
・富士山1周(約115.5km)
・御殿場発ワンウェイ(約53km)
主催:一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン
共催:御殿場市
特別協賛:スルガ銀行株式会社
公式WEBサイト:https://www.tour-de-nippon.jp/series/fujiichi/
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 編集:バイシクルクラブ編集部 写真と文:井上六郎
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