
アートは感染する。|アウトドアタウンときがわで里山遊び#44
青木達也(アオ)
- 2026年11月06日
「アウトドアといえば、ときがわを思い浮かべるような“アウトドアタウン”にしたい!」。そんな思いを抱き、地元の人を巻き込みながら日々さまざまな活動を行なう、野あそび夫婦のアオさんこと青木達也さんが、ときがわの自然の楽しみ方や、そこで暮らす魅力的な人たちなどを紹介します。
アートは感染する。
GRIDの裏にある倉庫のシェアアトリエに、1年前、ひとりのアーティストがやってきた。名前は「青くれ」。廃鉄を使って作品をつくるアーティストだ。彼が使うのは、使い古された工具や、なんの部品だったのかもわからない鉄の塊。それらを独自の感性で組み合わせ、ひとつの作品へと仕立てていく。彼いわく、眺めているうちに、自然と素材のほうから語りかけてくるのだという。

元々バイクショップで溶接を学んだ彼は、その腕も確かだ。無骨な鉄の塊が、繊細な溶接によって、まるで最初からそういう形だったかのように組み上がっていく。
アートという世界には、いつも不思議な矛盾がある。人の心を動かす純粋な表現でありながら、ときには巨額の富を生む商品にもなる。高度な知性が求められるいっぽうで、子どものような無邪気さが評価されることもある。その自由さこそが魅力なのだろうが、どうにもひと筋縄ではいかない。
こう見えて、自分は芸術系の大学を卒業している。もっとも、そんなことを自分でも忘れてしまうほど、ここ最近はアートから遠ざかっていた。学生のころは、作品を見るたびに、なにが優れているのか、どういう意図があるのか、なにか自分の制作のヒントにならないか。そんなことばかり考えていた気がする。
ところが最近、彼と話しているうちに、またアートがおもしろくなってきた。不思議なことに、昔とは少し違う。作品の良し悪しというよりも、答えのないものに向かって、ひたすら手を動かし続ける。その姿に、妙に心を打たれるのだ。学生のころとは違う目線でアートを楽しめるようになったのは、歳を重ね、さまざまな経験をしてきたからなのかもしれない。そしておもしろいことに、彼の創作意欲に刺激されているのは、自分だけではないらしい。
彼がやってきてから、アトリエの木工家も新しい作品づくりに挑戦し始めた。以前はどこか味気なかった工場の一角も、いまでは彼の作品が並び、空間そのものがひとつのアート作品のようになってきた。夜になると、暗闇のなかで溶接の火花が散る。そんな彼の姿を見ていると、こちらまでなにかおもしろいことを始めたくなる。
アートというのは、どうやら感染するものらしい。

そんな彼が今度、浅草で初めての個展を開くことになった。驚いたことに、展示するのはすべて新作だという。アトリエにはすでに何点もの作品があるのに、それらは持っていかないらしい。きっと、いまの自分から生まれる、もっとも鮮度の高い作品を見てもらいたいのだろう。
今回の個展のDMに使われている作品は、自分のお気に入りのひとつだ。どこかアフリカのプリミティブアートを思わせる力強さがありながら、細部には彼らしい繊細さが宿っている。まるで自画像のようにも見えるその作品が、初個展の顔になっているのもいい。
会期中はほとんどの日に在廊するという。作品はもちろん、本人と話してみるのもきっとおもしろい。彼の熱に触れに、ぜひ浅草へ。帰り道には、自分もなにかをつくりたくなっているかもしれない。

「青くれ展」
会期:2026 年 11月 21日〜11月29日
時間:13:00~18:00
※ 25日、26日はクローズ
場所:サイトウ古物軒(東京都台東区浅草6‑41‑10)
アクセス:銀座線・東武線 浅草駅から徒歩約15分
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PROFILE
ランドネ / NONIWA
青木達也(アオ)
レンタル・レクチャー付きでキャンプ体験ができる施設「キャンプ民泊NONIWA」と、暮らしとアウトドアをテーマにしたお店「GRID」を埼玉県ときがわ町で運営。「野あそび夫婦」という夫婦ユニットでキャンプインストラクターとしても活動。監修「ソロキャンプ大事典」。 https://noniwa.jp/
レンタル・レクチャー付きでキャンプ体験ができる施設「キャンプ民泊NONIWA」と、暮らしとアウトドアをテーマにしたお店「GRID」を埼玉県ときがわ町で運営。「野あそび夫婦」という夫婦ユニットでキャンプインストラクターとしても活動。監修「ソロキャンプ大事典」。 https://noniwa.jp/
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