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生後2カ月|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #55

個人的に今年の夏は非常に多くのイベントがあり、充実した時間を過ごすことができた。初夏にライチョウのヒナの誕生を見届けてから講演会にはじまり、普及啓発イベント、12年ぶりに挑戦した田淵行男賞の件や地元での写真展開催など目まぐるしかったが、行動理念が「ライチョウ」の私としてはこれ以上ない夏だった。引き続き己が使命として邁進していきたい。

編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平

生後2カ月

なかなか終わらない夏が続く。子育て中のライチョウ家族も温かい羽毛が枷となり、大きく口を開けて息をしているのを見かける今日このごろであるが、それでも彼らは一生懸命生きている。

近年の高山帯の暑さは、あくまで体感ではあるが昔と比べると上がっているように思える。子育て中の母鳥がハァハァと口で息を整えているのを見始めてから何年も経つ。もともと北半球北部にのみ生息していたライチョウにとって、気温が高いというのはそれだけで致命的な状況である。氷河期の終わりとともに現在の日本列島に足を延ばしていた一団がユーラシア大陸に戻れなくなり、日本固有種として根付いたのが彼らの祖先になるわけだが、よもやさらに暖かくなり追い詰められるとは思わなかったのではないだろうか。とはいえ、生まれた場所で咲かざるを得ないのは定住型の生きものの性である。

私の知り合いには年月を重ね、幾度かの子育てを経た母ライチョウがいるのだが、この年は生後2カ月の時点で4羽のヒナを大きくするに至っていた。暑い紫外線を避けたいのか昼時を過ぎて東斜面が日陰になり、そこに彼女らが現れる。「これ美味しいわよ」とスイバ(タデ科の植物)を見上げ、ヒナたちに食べて見せる母親に習い、ヒナたちも一心不乱にかじりつく。私も近くの岩に腰を下ろし彼女たちの食事の邪魔にならないように静かに見守る時間が過ぎていた。


母鳥と私が知り合いということもあり、その子どもたちもおそらく私のことを無害と認識しているようすで、近くでの観察がはかどる。ちなみにどのくらいの知り合いかというと、抱卵巣に横付けして母鳥とともにこの子たちの誕生を見届けたくらいには近しい存在である。もともと人間を含めた直接的危害を与えてこない存在に関しては寛容な特性も相まってか、ほぼ親戚のおじさんと化した私に1羽のヒナが無造作に近づいてきた。

今回の一枚は誕生を見届けたのち、生後2カ月まで大きくなった知り合いの子どもの写真である。「あー、だれかと思ったらおじさんか〜」とでも言っているのか、小首をかしげ私を確認したのちにまたスイバを目掛けて動き回っていた。私自身は「ライチョウが人間を好く」というような手前味噌で都合の良い幻想を抱くことはしないのだが、それでも種を超えた相手にこのようなフラットな所作をもって接してもらえることに少しばかりほくそ笑んでしまうのだ。

今週のアザーカット

高橋広平写真展「雷鳥 〜四季を纏う神の鳥〜」は、無事に会期を終了いたしました。今回は前回紹介した新動画を大々的に導入したこともあり、写真展の完成度も相当に高かったと思います。私自身、この「四季を纏う神の鳥」展は「育てる写真展」としているので、今後もどこかで開催する際にはその会場に合わせた仕様にしていこうと思っております。この場を借りてしまいますが、写真展にお越しいただいたみなさまにも厚く御礼申し上げます。

▶過去の「旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺」一覧はこちら

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PROFILE

高橋広平

PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家

高橋広平

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
Instagram : sundays_photo

高橋広平の記事一覧

1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。
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