
中国勢が表彰台独占のUCIアジアMTBシリーズ貴陽 高橋翔と森悠貴が5位、日吉彩香はジュニア女子3位表彰台
Bicycle Club編集部
- 2026年09月09日
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中国・貴州省貴陽市で初開催されたUCIクラス2のMTB国際大会「2026 UCI Asian Mountain Bike Series GUIYANG」。急成長を遂げる中国マウンテンバイク界の巨大拠点を舞台に、アジア6カ国・地域から集った強豪が火花を散らした。厚い選手層と組織力で圧倒する中国勢に対し、日本勢は男子エリートで高橋翔(drawer THE RACING)が先頭集団に食らいついての5位、女子エリートで森悠貴(drawer THE RACING)がアジアシリーズ初完走となる価値ある5位、そして女子ジュニアでは日吉彩香(ASIA UNION TCS RACING TEAM)が堂々の3位表彰台を獲得した。
中国MTB強化の象徴 広大な専用コースとハイレベルな基礎力
日本から直行便のない貴陽へは、厦門を経由してのフライト。貴陽龍洞堡国際空港からさらに車で西へ約1時間、レースの舞台となった貴州工業職業技術大学(清鎮キャンパス)に足を踏み入れた日本チームの面々は、そのスケールに目を見張ることとなった。

標高約1,100mの高原に位置する会場には、本格的なXCOサーキットだけでなく、広大なパンプトラックやトライアル専用セクションまでが完備。中国西部におけるMTB強化のハブとして整備された施設だ。
コース路面は丁寧に砂利が敷き詰められ、各所に排水設備が張り巡らされた全天候型設計。近年のワールドカップで見られるような極端に巨大な人工ドロップやロックガーデンは抑えめなものの、短いアップダウンが息つく暇もなく連続し、自然なリズムでスピードを繋ぐレイアウトとなっている。「走る、曲がる、止まる、飛ぶ」というマウンテンバイクの根幹を成す基本技術と、高いフィジカルがダイレクトにタイムへと直結するコースだ。
特筆すべきは、ナショナルチームのトップ層を除き、地元中国の若手や地域クラブ選手の多くがハードテールバイクを駆っていた点だ。日常的にこうした整備の行き届いた専用施設でバイクを自在に操る基礎スキルを徹底的に叩き込む――。中国MTB界の急激な競技力向上を支える揺ぎない育成環境を肌で感じる遠征の幕開けとなった。
【初日午前:XCC】中国勢の組織的包囲網 接触転倒を乗り越え高橋翔が6位
大会初日、朝一番に行われたのは短時間のハイスピードバトル、XCC(クロスカントリー・ショートトラック)。男子エリート(4周・6.6km)には高橋翔(drawer THE RACING)、嶋崎亮我(drawer THE CYCLING CLUB)、そして日本MTB界のレジェンド山本幸平(ASIA UNION TCS RACING TEAM)が出走した。

スタートが切られると、高橋は好スタートを決めて王胜(中国ナショナルチーム)とともに先頭争いを展開。嶋崎も序盤は先頭が見える好位置につけて周回を重ねる。
しかし、レース中盤から中国勢が圧倒的な数的優位を生かした揺さぶりを開始する。王勝を筆頭に、高永兵、陳科宇、陳星のナショナルチーム4選手が先頭パックを形成。高橋を完全にマークし、ペースアップと封じ込めを繰り返す組織的なレース運びを見せる。高橋はその包囲網のなかで活路を見出すべくアグレッシブに位置取りを争った。
迎えた最終局面、カザフスタンの強豪デニス・セルギエンコと接触して痛恨のスリップダウン。それでもすぐに立ち上がってフィニッシュラインを駆け抜けた高橋は6位。優勝した王勝をはじめ中国勢が1位から4位までを独占する結果となった。序盤の好位置から粘りの走りを続けた嶋崎は14位でレースを終えている。
女子エリートXCC(4周・6.6km)には森悠貴(drawer THE RACING)が出走。中国ナショナルチームのエース王婷が24分14秒の圧勝劇を演じる中、森は集団のハイペースに食らいつき、トップから3分57秒差の7位でフィニッシュした。
【初日午後:XCE】高橋翔がビッグファイナル進出 日吉彩香も6位と気を吐く
同日午後には、1周0.95kmのスプリントコースで行われるXCE(クロスカントリー・エリミネーター)が開催された。
男子予選タイムトライアルでは、高橋翔がトップと2.92秒差の4位、嶋崎亮我も3.66秒差の6位と好タイムをマークして決勝トーナメントへ進出。1/4決勝、準決勝と持ち前の瞬発力とライン取りの巧みさを発揮した高橋は、見事に上位4名による「ビッグファイナル」へと駒を進めた。
4名で争われた決勝では、東南アジア屈指のスプリンターであるリヤドハキム・ルクマン(シンガポール)や、中国ナショナルチームの若手スプリンター管慶雲、王志皓と対戦。最後は管慶雲の爆発的なスプリントの前に屈したものの、高橋は堂々の4位に入賞した。嶋崎は1/4決勝で惜しくも敗退したものの9位に食い込んでいる。
女子XCEでは、ジュニア世代の日吉彩香(ASIA UNION TCS RACING TEAM)がエリート選手たちを相手に躍動した。予選12位からスタートした日吉は、1/4決勝第2組でカザフスタンのエリート選手たちを相手に冷静なレース運びを披露し、なんと1位通過。準決勝を経て進出したスモールファイナルでも2位に入り、総合6位という素晴らしい結果を残した。森悠貴も1/4決勝を戦い、総合10位となっている。
【男子エリートXCO】中国勢の分厚いチーム戦術 高橋翔が先頭集団で奮闘し5位
大会2日目、本大会のメインイベントとなるXCO(クロスカントリー・オリンピック)男子エリート(7周回・24.5km)を迎えた。
気温がぐんぐんと上昇する中、号砲とともに飛び出したのは高橋翔。王勝、そしてカザフスタンチャンピオンのセルギエンコとともに鋭いダッシュを決め、オープニングラップから3名で抜け出し先頭パックを形成する。

しかし、ここでも立ちはだかったのが中国勢の選手層とチームワークだった。
2番手集団では陳科宇が高橋を捉えるべく執拗にプレッシャーをかけ、その後方からは前日のXCCで2位に入った高永兵、さらに地元クラブ「貴州工業職業技術学院」のジャージを着る謝光超が猛烈なペースで追い上げてくる。
3周目の終盤、上り坂の急勾配で王胜が決定的なアタックを敢行。高橋は食らいつこうと限界まで出力を引き上げるが、じわじわとタイム差を広げられてしまう。さらに背後から合流してきた謝光超と高永兵の追撃を受け、単独4番手へと後退。
終盤はセルギエンコとの4位争いとなり、最後まで気迫のペダリングを続けた高橋は、トップから2分05秒差の5位でフィニッシュラインを越えた。

優勝は独走に持ち込んだ王勝。そして2位には謝光超が15秒差で入り銀メダルを獲得。3位に高永兵が入り、中国勢が表彰台を独占した。一方、序盤の混戦でポジションを落とした嶋崎は、苦しい単独走を強いられながらも14位で完走を果たした。
【女子エリートXCO】108分のタフな戦い 森悠貴がアジアシリーズ初完走5位の金星
女子エリートXCOは6周回・21kmの長丁場。強い陽射しが照りつけるタフなコンディションの中、森悠貴がこれまでの練習の成果を結実させる見事な走りを見せた。

スタート直後、圧倒的な独走態勢に入った王婷を追う第2集団の中で、森は冷静に自分のペースを構築。カザフスタンのベテラン勢や中国の若手選手たちが激しい競り合いを見せる中、得意とするテクニカルな下りセクションで果敢に前へ出てアドバンテージを稼ぐ。
水分補給や冷却対策を確実にこなし、4周目以降のタフな単独走でもラップタイムの落ち込みを最小限にセーブ。1時間48分05秒、過去最長となる108分間の我慢比べを走り抜き、見事5位でチェッカーを受けた。

参戦3シーズン目にして手にした、アジアシリーズのエリートカテゴリー初完走。中国のトップ選手や海外代表がひしめく中で掴み取った5位は、数字以上の大きな自信を森にもたらす結果となった。
【女子ジュニアXCO】中国ナショナルチームに迫る力走 日吉彩香が堂々の3位表彰台
大会最終レースとなった女子ジュニアXCO(4周回・14km)では、ASIA UNION TCS RACING TEAMの日吉彩香が素晴らしいパフォーマンスを披露した。

ライバルとなるのは、中国ナショナルチームの強化育成指定を受ける銭存秀と李怡。レース序盤から中国の2選手が抜け出す展開となったが、日吉は冷静に自分の走りに集中。難所が続く林間シングルトラックでもミスなくスムーズなラインをトレースし、後続を大きく引き離していく。

気温がピークに達する過酷な状況下でも、最後までアグレッシブな姿勢を崩さず4周回を1時間05分27秒で走破。優勝した銭存秀、2位の李怡に続き、堂々の3位銅メダルを獲得。表彰台で爽やかな笑顔を見せた。
選手コメント
高橋翔(drawer THE RACING)
「中国との差は大きい。来年のアジア選手権でひっくり返す」
「XCCとXCEが同日に行われ、翌日にXCOという非常にハードなスケジュールでした。XCOはスタートからハイペースで進み、3人の先頭パックを形成できましたが、周回を重ねるごとにトップとの差は少しずつ開いていきました。地元開催で地の利があるとはいえ、この差は大きいと痛感しています。来年のアジア選手権で勝つためには、この差を何としてもひっくり返さなければならない。課題を明確にして次へ繋げたいです」
森悠貴(drawer THE RACING)
「アジアシリーズ参戦3年目で初のエリート完走。大きな価値のある5位」
「3周目までは格上の選手たちと一緒に走り、自分の得意な下りセクションでは積極的に前へ出ることができました。4周目からは単独走になりましたが、最後まで集中力を切らさずに走れました。一昨年からアジアシリーズを走り始め、ようやくエリートで完走することができました。中国の強い選手たちが揃う厳しいレースでの5位完走は、自分にとって本当に価値のある結果だと思います」
日吉彩香(ASIA UNION TCS RACING TEAM)
「悔しさは残るが、多くの収穫を得た遠征。一歩ずつ前へ進む」
「XCEは6位、XCOは3位表彰台という結果でした。リザルトそのものは優勝に届かず悔しい気持ちもありますが、XCO、XCEともにレースを通して得られたものが非常に多く、自分にとってかけがえのない大きな経験となりました。また一つずつ課題をクリアして成長していきます。応援とサポートをありがとうございました」
嶋崎亮我(drawer THE CYCLING CLUB)
「苦しい2日間。国内後半戦でのリベンジを誓う」
「XCO、XCCともに14位という結果でした。特にXCOではスタート直後のポジション争いから後手に回ってしまい、そのまま順位を落としてしまいました。どうすれば状況を打開できるのか模索しながら過ごした遠征でしたが、非常に苦しい2日間となってしまいました。ここで足踏みしている時間はありません。気持ちを切り替え、国内後半戦でリベンジします」
総括:アジア選手権を見据えて浮き彫りとなった「現在地」
今回の貴陽遠征で日本チームが目の当たりにしたのは、中国マウンテンバイク界のすさまじい進化スピードだった。
充実した常設トレーニングコース、幼少期からハードテールで基本を叩き込まれる育成環境、ナショナルチームから地域クラブ、大学・実業団へと広がる分厚い競技人口のピラミッド。そしてレース中に発揮される緻密で容赦のないチーム戦術。貴州省が掲げる山岳スポーツ振興政策は、すでに確固たる競技力となって実を結びつつある。
しかし、その厚い壁に対し、日本勢が見せた戦いぶりもまた確かな収穫だった。男子エリートで先頭争いに真っ向から挑んだ高橋翔のスピード、過酷な108分間を耐え抜いてステップアップを果たした森優希のメンタリティ、そして中国勢の牙城に割って入った日吉彩香のポテンシャル。
来たるアジア選手権の頂を目指し、埋めるべき差と、自らが磨くべき武器はどこにあるのか。中国・貴陽のタフなコースで得た経験は、日本MTB界の次なる挑戦への確かな道標となるはずだ。
リザルト
男子エリート XCO(7Laps – 24.5km)
1位 王勝(中国ナショナルチーム) 1:30:15
2位 謝光超(貴州工業職業技術学院サイクリングクラブ、中国) +0:15
3位 高永兵(中国ナショナルチーム) +0:15
4位 デニス・セルギエンコ(カザフスタンナショナルチーム) +1:16
5位 高橋翔(drawer THE RACING、日本) +2:05
6位 陳科宇(中国ナショナルチーム) +2:21
7位 文霊浩(貴州マクロサイクリングチーム、中国) +4:19
8位 厳涛(貴州マクロサイクリングチーム、中国) +6:09
9位 陳星(中国ナショナルチーム) +6:09
10位 ツェワン・ノルブ(ASIA UNION TCS RACING TEAM、インド) +6:42
14位 嶋崎亮我(drawer THE CYCLING CLUB、日本) +9:57
女子エリート XCO(6Laps – 21.0km)
1位 王婷(中国ナショナルチーム) 1:40:50
2位 張子怡(貴州マクロサイクリングチーム、中国) +1:24
3位 李発彩(貴州マクロサイクリングチーム、中国) +2:54
4位 タチアナ・ゲネレワ(カザフスタンナショナルチーム) +6:33
5位 森悠貴(drawer THE RACING、日本) +7:15
6位 ユリヤ・リ(カザフスタンナショナルチーム) +8:57
7位 シャーニュパウラ・ヤオヤオ(フィリピンナショナルチーム) +11:20
女子ジュニア XCO(4Laps – 14.0km)
1位 銭存秀(中国ナショナルチーム) 1:01:32
2位 李怡(中国ナショナルチーム) +2:22
3位 日吉彩香(ASIA UNION TCS RACING TEAM、日本) +3:55
4位 袁娅嵐(貴州マクロサイクリングチーム、中国) -1Lap
男子 XCE(エリミネーター)
1位 管慶雲(中国ナショナルチーム、中国)
2位 リヤドハキム・ルクマン(シンガポールナショナルチーム)
3位 王志皓(中国ナショナルチーム)
4位 高橋翔(drawer THE RACING、日本)
9位 嶋崎亮我(drawer THE CYCLING CLUB / 日本)
女子 XCE(エリミネーター)
1位 王婷(中国ナショナルチーム)
2位 銭存秀(中国ナショナルチーム)
3位 李怡(中国ナショナルチーム)
4位 張子怡(貴州マクロサイクリングチーム、中国)
5位 袁娅嵐(貴州マクロサイクリングチーム、中国)
6位 日吉彩香(ASIA UNION TCS RACING TEAM、日本)
10位 森悠貴(drawer THE RACING、日本)
男子エリート XCC(ショートトラック / 4Laps – 6.6km)
1位 王勝(中国ナショナルチーム) 20:31
2位 高永兵(中国ナショナルチーム) +0:08
3位 陳科宇(中国ナショナルチーム) +0:11
4位 陳星(中国ナショナルチーム) +0:25
5位 ツェワン・ノルブ(ASIA UNION TCS RACING TEAM、インド) +0:26
6位 高橋翔(drawer THE RACING、日本) +0:40
12位 山本幸平(ASIA UNION TCS RACING TEAM、日本) +1:53
14位 嶋崎亮我(drawer THE CYCLING CLUB、日本) +2:06
女子エリート XCC(ショートトラック / 4Laps – 6.6km)
1位 王婷(中国ナショナルチーム) 24:14
2位 タチアナ・ゲネレワ(カザフスタンナショナルチーム) +0:52
3位 張子怡(貴州マクロサイクリングチーム、中国) +1:42
7位 森悠貴(drawer THE RACING / 日本) +3:57(28:11)
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 文:井上和隆 写真:2026 UCI Asian Mountain Bike Series GUIYANG
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