
アジアコンチネンタルシリーズ最終戦で副島達海がダブルウィン 石田と高橋も優勝し日本勢躍動
Bicycle Club編集部
- 2026年08月26日
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マレーシア・サラワク州クチンで8月20日から23日にかけて開催された「Siol Interational Mountain Bike Challenge(SIMBC)2026」。2026年UCIアジアコンチネンタルシリーズ(ACS)最終戦として行われた本大会は、高温多湿に加え森林火災の煙害に見舞われる過酷なサバイバルレースとなった。その中で日本勢は圧倒的なパフォーマンスを披露。副島達海(TRKWorks)がXCCとXCOの両種目で優勝するダブルウィンを達成し、石田唯(TRKWorks)がXCC女子を、高橋翔(drawer THE RACING)がXCO男子U23を制覇するなど、各カテゴリーで表彰台を席巻した。
過酷な灼熱と煙害のクチン チームの総力戦で挑んだアジアシリーズ最終戦
アジア各国がナショナルチーム体制で挑むなか、日本勢は各所属チームからの参戦という形でマレーシア・クチンの地に降り立った。本大会はUCIアジアコンチネンタルシリーズ全5戦の最終ラウンドに位置づけられ、クロスカントリーオリンピック(XCO)は最高クラスのポイントが与えられる「CS(コンチネンタルシリーズ)」、クロスカントリーショートサーキット(XCC)は「Class 3」に指定されている。2028年ロサンゼルスオリンピックに向けたUCIの国別ポイント獲得において、極めて重要な一戦だ。

しかし、選手たちを待ち受けていたのは熱帯特有の高温多湿な環境だけではなかった。隣国インドネシアで発生した大規模な森林火災による煙害(ヘイズ)がクチン市街を覆い、一部の学校が休校になるほど大気環境が悪化。TRKWorksの石田唯が滞在2日目から喉の痛みを訴えるなど、フィジカル面の管理がレースの行方を大きく左右する状況となった。

これに対し、TRKWorksの小林輝紀監督率いるサポート陣は大量の氷と冷却ボトルを準備。ジャージ内への氷パック投入や、フィードゾーンでの毎周回の氷供給など徹底したクーリング対策を実施し、消費した氷は実に約6kgに及んだという。
XCCで日本勢が躍動!石田唯と副島達海がアベック優勝

22日に行われたXCC。8カ国14名が出場した女子エリートでは、石田唯(TRKWorks)が抜群のレース勘を見せた。スタート直後から集団の前方で展開し、チャイニーズタイペイの蔡雅羽(サイ・ヤーユー)との一騎打ちに持ち込む。中盤以降は得意のペースアップでライバルを徐々に突き放し、最終周回には安全圏のアドバンテージを築いてトップフィニッシュ。アジア各国の強豪を相手にACS最終戦の勝者として堂々たる姿を見せた。
石田唯(TRKWorks)のコメント

「XCCでは、自分の得意なポイントでペースアップし、ライバルに少しずつ差をつけることができました。レース前にイメージしていた理想の展開で優勝することができました。さらにチームメイトの達海も強い走りで優勝し、チームで2勝できたことはとてもうれしかったです」

続いて行われた男子エリート(7カ国28名出場)では、カザフスタンのナショナルチャンピオンであるデニス・セルギエンコが序盤からレースを牽引。副島達海(TRKWorks)はその後ろ2番手で冷静に機を伺う。レースが中盤に差し掛かると、満を持して首位に浮上した副島が一気にペースを上げ、主導権を掌握。そのままリズム良く差を広げ、最後まで先頭を譲ることなくフィニッシュラインを駆け抜けた。
さらに日本勢は高橋翔(drawer THE RACING)が3位、嶋崎亮我(drawer THE CYCLING CLUB)が4位、ベテランの山本幸平(ASIA UNION TCS Racing Team)が5位に入り、トップ5のうち4枠を占めるという圧倒的なリザルトを残した。
副島達海(TRKWorks)のコメント
「去年も参戦したこのレースでは、雨によるマッドコンディションに苦戦し2位という悔しい結果でした。リベンジの思いも込めてクチンに戻ってきました。去年とはメンバーこそ違いますが、カザフスタンのデニス選手とは何度も対戦しており、負けることも多い実力の拮抗したライバルです。その相手に勝って優勝することができて、とてもうれしく思っています」
XCO男子エリート:副島達海がカザフスタン王者を振り切り完全優勝

翌23日に行われたメインイベント、XCO。1周約3.2kmのコースを6周する19.2kmで争われた男子エリートは、前日のXCC同様、副島とセルギエンコによる激しいマッチレースで幕を開けた。
スタートから積極的に前へ出て集団を抜け出した両者だったが、3周目に入ると全日本王者の副島がペースアップを開始。小刻みなアタックを繰り返してセルギエンコを振り切ると、後続とのタイム差をぐんぐんと広げていく。厳しい暑さと息苦しい大気の中にあっても、終盤までラップタイムを落とさず安定した独走劇を披露した副島は、1時間08分33秒のタイムでフィニッシュ。2位のセルギエンコに43秒の差をつけ、XCCとの「ダブルウィン」という最高の形でアジアシリーズを締めくくった。山本幸平も粘りの走りで5位入っている。
副島達海(TRKWorks)のコメント

「全日本選手権での優勝から1カ月。WAVE ONE様にはチャンピオンジャージを、OGK Kabuto様にはチャンピオンヘルメットを急ピッチで製作していただきました。昨年のXCOはパンクなどのトラブルもあり5位でしたが、今年はトラブルなく優勝することができました。コンチネンタルシリーズで大きなUCIポイントを獲得できたこともうれしく思っています。多くのサポートを受けながら、この暑い環境の中でチームとしてレースを戦えたことにとても満足しています。アジア競技大会に向けて、さらに調子を上げていきたいと思います」
XCO 男子U23&女子エリート:高橋翔が独走V、石田唯は死闘の末に3位表彰台

男子U23(5周回/約16km)では、高橋翔がスタートから他を圧倒するスピードを見せつけた。1周目から単独先頭に立つと、ペーシングや水分補給を細かくコントロールし、灼熱のコンディションにもかかわらずラップタイムを維持。一度も先頭を譲らない完全な独走優勝を飾った。同カテゴリーでは嶋崎亮我も3位に入り、日本勢が表彰台の2枠を獲得した。
高橋翔(drawer THE RACING)のコメント
「アジアでは最も大きなUCIポイントを獲得できるレースの一つで、自身のランキング向上はもちろん、2028年ロサンゼルスオリンピックの国別出場枠獲得に少しでも貢献できればと思って参戦しました。自分自身としても久しぶりの優勝だったのでうれしく思っています。アジア特有の暑さがあるなかで、掛け水や補給、水分摂取、ペーシングなどを細かく調整し、最初から最後まで大きくペースを落とすことなくレースを終えられたので、内容としても良かったと思います。来週は中国で開催されるレースに出場予定ですが、自分のベストを尽くして最大限の結果を出したいと思っています」
嶋崎亮我(drawer THE CYCLING CLUB)のコメント
「全日本選手権、アジア選手権とタイトルの懸かったレースで結果を残せなかったこともあり、優勝を目標に準備してきましたが結果は3位でした。表彰台には上がれましたが悔しさも残っています。アジア特有の環境や気候への対応、遠征先での生活面も含めて、まだ改善できる部分があると感じました。次戦の中国でのレースでは、アジア選手権で戦ったトップ選手たちとより前で競り合えるよう準備を進めます」

一方、女子エリート(5周回/約16km)では、石田唯が出場選手中唯一のリジッドバイクを駆り、荒れた路面を高いテクニックでこなしながら3周目までレースをコントロールした。軽量バイクを生かした登坂力で自らのペースを刻んでいたが、勝負どころの4周目に無念のオーバーヒートに見舞われる。急激なペースダウンを余儀なくされ首位争いから脱落したものの、最後まで諦めずにペダルを踏み続け、3位でフィニッシュ。過酷な状況下で貴重なUCIポイントと表彰台を確保した。
石田唯(TRKWorks)のコメント

「2年後のロサンゼルスオリンピックに向けて、UCIポイントを積み上げることを目的に灼熱のマレーシアにやってきました。今回はナショナルチャンピオンジャージを着用して走る初めてのUCIレースでした。前日のXCC優勝を弾みに自信を持ってスタートし、1周目からレースをリードする展開となりました。暑さとの戦いになることを想定し、ペース配分やフィードでのクーリングを徹底していましたが、オーバーヒートして順位を下げてしまいました。そんな中でも最後まで全力でサポートしてくださったチームには感謝しています」
世界、そしてアジア競技大会を見据える日本勢

ナショナルチームとして組織的に挑んでくるアジアのライバルたちに対し、各所属チームからの参戦ながらカテゴリーの垣根を越えて圧巻のリザルトを残した日本勢。過酷な気象条件や煙害といったアクシデントを、個々の走力とチームの献身的なサポートによって乗り越え、トップライダー層の厚さを改めてアジアに知らしめた。
小林輝紀監督(TRKWorks)の大会総括
「今回のアジアコンチネンタルシリーズレースファイナルで、TRKWorksは男女エリートでアジアシリーズ総合トップに立ちました。 同時にチームのシーズン目標であった(ナショナルチャンピオンの如何を問わず)2027シーズンのワールドカップ全戦の出場権利を得ました。 そして、男女でエリートナショナルチャンピオンを擁するアジア唯一のチームとして、アジアの仲間達とタフなレースを競い、称え合えたことを嬉しく思っています。 来週末にイタリアで行われる世界選手権はスキップしますが、1ヶ月後のアジア競技大会での金メダル獲得に向け、帰国後は飯山ガレージを基地に強化トレーニングに入ります。 私達は次の大冒険を楽しみに、成長を続けます。 いつも沢山の応援をありがとうございます。」
アジアシリーズの激闘を終え、日本のトップライダーたちは次なる目標である中国でのレースやアジア競技大会へと向かう。五輪出場枠の獲得という大きなミッションを胸に、彼らの果敢な挑戦は続いていく。
SIMBC Asia MTB Series 2026 最終戦 リザルト
XCC 男子エリート
1位 副島 達海(TRKWorks、日本) 21分43秒
2位 デニス・セルギエンコ(カザフスタン) 21分56秒
3位 高橋 翔(drawer THE RACING、日本) 22分14秒
4位 嶋崎 亮我(drawer THE CYCLING CLUB、日本) 22分34秒
5位 山本 幸平(ASIA UNION TCS Racing Team、日本) 22分38秒
15位 ⻘⽊ 拓夢(FineNovaLAB、日本) LAP
22位 保田 莉央(drawer THE CYCLING CLUB、日本) LAP
XCC 女子エリート
1位 石田 唯(TRKWorks、日本) 21分55秒
2位 蔡 雅羽(チャイニーズタイペイ) 22分19秒
3位 タチアナ・ゲネレワ(カザフスタン) 23分34秒
13位 森 悠貴(drawer THE CYCLING CLUB、日本) LAP
XCE 男子エリート
1位 プンシリ・シリモンコン(タイ)
2位 イザ・ムハンマド(インドネシア)
3位 サニー・シュアイブ・サフィー(マレーシア)
6位 嶋崎 亮我(drawer THE CYCLING CLUB、日本)
9位 高橋 翔(drawer THE RACING、日本)
15位 保田 莉央(drawer THE CYCLING CLUB、日本)
18位 ⻘⽊ 拓夢(FineNovaLAB、日本)
XCE 女子エリート
1位 デラ・アンジャル・ウラン(インドネシア)
2位 蔡 雅羽(チャイニーズタイペイ)
3位 マリア・シェルスチュク(ウクライナ)
4位 森 悠貴(drawer THE RACING、日本)
XCO 男子エリート
1位 副島 達海(TRKWorks、日本) 1時間8分33秒
2位 デニス・セルギエンコ(カザフスタン) 1時間9分16秒
3位 イザ・ムハンマド(インドネシア) 1時間12分23秒
5位 山本幸平(ASIA UNION TCS Racing Team、日本) 1時間15分24秒
XCO 男子U23
1位 高橋 翔(drawer THE RACING、日本) 58分5秒
2位 ツェワン・ノルブ(インド) 1時間0分45秒
3位 嶋崎亮我(drawer THE CYCLING CLUB、日本) 1時間3分21秒
14位 ⻘⽊ 拓夢(FineNovaLAB、日本) -1LAP
15位 保田 莉央(drawer THE CYCLING CLUB、日本) -2LAPS
XCO 女子エリート
1位 蔡 雅羽(チャイニーズタイペイ) 1時間28分27秒
2位 マリア・シェルスチュク(ウクライナ)1時間31分37秒
3位 石田唯(TRKWorks、日本) 1時間33分35秒
12位 森 悠貴(drawer THE RACING、日本) LAP
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文:井上和隆 写真:bandarayaku、TRK Works、drawer THE RACING
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