
ヨセミテ国立公園、トゥオルミ・メドウズでのソロクライミング|筆とまなざし#470
成瀬洋平
- 2026年08月21日
トゥオルミ・メドウズでのロープソロ
今回はひとり旅なのでクライミングパートナーがいない。そのため、クライミングは必然的にロープソロとなる。ビレイヤーなしでひとりで登る方法である。
ロープソロはそれ用のギアも販売はされているものの、ギアを工夫して行なっている人がほとんどだ。ギアの取扱説明書には書かれていない方法なのでメーカー的にはNGだし、確立されたシステムもない。あくまでもそのリスクを受け入れて行なうしかない。
まずはトゥオルミの岩に慣れようと、日帰りで出かけることにした。クローリー・レイクのキャンプ場から車で1時間と少し。ハイウェイから谷沿いの道に車を走らせるとどんどん標高が高くなり、やがて高山地帯となる。タイオガ・パスがヨセミテ国立公園の玄関口になっていて、ゲートで入園料を支払う。料金は政府の政策で流動的なようだが、今年は35ドルだった。1週間有効で、明日以降は有効期限の書かれたレシートを見せれば通過できる。
独特な岩質に慣れるために
「TUOLMNE MEADOWS」の「MEADOW」は「草原」という意味である。標高は2,500〜3,000mあり、その名のとおり気持ちの良い草原が広がっていた。草原を取り囲むようにして花崗岩の巨大なドームが林立し、その裾野にパインなどの針葉樹の森が広がっている。岩に慣れることとロープソロの練習に訪れたのは、もっとも簡単そうなシングルピッチのクラックのある「Daff Dome South Flank」というエリアだった。それらしい駐車場に車を停めて歩くこと約10分。すでに数人のクライマーが登っていたのですぐにわかった。正面には「Fairview Dome」の巨大な岩塊がそびえている。それにしても簡単なアプローチなのに息が切れる。
岩場は「South」という名前が付いているだけあって日当たりがよくて暑かった。手始めに5.7のクラックから登り始める。しかし、なんだか登りにくい。その理由は独特の岩質である。ここの花崗岩には大きな白い結晶がたくさんついていて、これがホールドになったりもするのだが、凸凹しているのでジャミングが決めにくいのだ。欠ける心配はほとんどないのだろうけれど、どのくらい信頼していいのかもわからない。第一結晶に足を置くと滑りそうで信用ならない。
「Daff Dome South Flank」で出会ったクリス
2本クラックを登ったところで、左のほうのルートを登っていた女性4人組がやってきた。終始笑いの絶えない、賑やかなパーティーである。
「ふたりの子どもを産んで、4年ぶりのクライミングなの。レイク・タホに住んでいて、5年ぶりにみんなとクライミングをしに来たんです」
ハツラツとして逞しそうな女性はクリスといった。「Cathedral Peak」に登りに行く予定だと言うと、
「順番待ちがひどいから朝早くから登り始めたほうがいいわよ」
と教えてくれた。ちょうど昨日、「Cathedral Peak」に登ってきたところなのだという。クリスたちは早めに下っていった。なかなか慣れない岩質だ。慣れるにはたくさん登るしかないだろう。明日は短いマルチピッチを登ってみよう。易しいクラックを4本登ってから岩場を下った。
著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平
1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。

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