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100Lのバックパックを背負って、ハイ・シエラへクライミングの旅へ|筆とまなざし#473

トゥオルミ・メドウズを起点にクライミングとスケッチを楽しむ旅をする

2日後、パンパンに膨らんだ100Lのバックパックを携えてトゥオルミ・メドウズのウィルダネスセンターを再訪した。対応してくれたのは先日と同じ女性レンジャーだった。

「あ、あなた覚えてるわよ」

計画を知っているので話が早い。けれども、今日の宿泊地にしたいカセドラル・レイクはすでに定員いっぱいになっていて、計画の逆コースを提案された。今日はのんびり歩いてキャンプしようと思っていたのだが、一番長い距離を歩かなくてはいけなくなる。ここのところ山歩きをしていないこととヘビー級のバックパックに一瞬ためらいが生じたが、今日出発するにはほかに方法がない。日も長い、なんとかなるだろう。

大まかな行程はこうだ。トゥオルミからジョン・ミューア・トレイルを少し歩き、途中からクライマーのアプローチ・トレイルに入ってバッド・レイクを目指す。この付近は幕営禁止になっているので、峠を越えてエコー・レイクまで下ってキャンプ。絵を描きながら2晩すごす。そしてカセドラル・レイクに移動し、ここでも2泊。その間にカセドラル・ピークでクライミングをして絵を描き、トゥオルミに戻ってくるという、4泊5日の山旅である。

パーミットの料金が10ドル、ベア・キャニスターのレンタル料金が5ドル。ほかの物価に比べてずいぶん安くておどろいた。レンジャーからキャンプの注意点を説明してもらい、ベア・キャニスターを脇に抱えて車に戻った。

ジョン・ミューアの『はじめてのシエラの夏』をバックパックに忍ばせて

さて、ここから山旅が始まるのだが、旅のようすは別の機会に譲ることにして、山を歩くなかで気づいたことを書いておこう。

そもそも、どうして今回の旅の舞台にハイ・シエラを選んだのか。それは、バックパッキングとスケッチとフリークライミングを融合させた旅をしたかったからである。晴天が多く、気候が穏やかで、アップダウンが少なく気ままな旅ができ、良質な花崗岩のマルチピッチルートがあり、描きたい風景が広がっている。ハイ・シエラにはそのような条件がすべて揃っているのである。

そしてそんな旅の道しるべとしてバックパックに忍ばせたのが、ジョン・ミューアの『はじめてのシエラの夏』(岡島成行=訳、宝島社)である。ジョン・ミューアについての説明は省くが、「自然保護の父」と呼ばれ、世界初の自然保護団体「シエラ・クラブ」の創始者であり、ヨセミテを国立公園にしてこの場所を開発の手から守った、アメリカの自然保護やアウトドア・カルチャーを語るうえで外すことのできない人物である。のちに彼の偉業を讃えて設定されたのが、ジョン・ミューア・トレイルである。

『はじめてのシエラの夏』は、彼が31歳のときにヒツジの放牧の手伝いとして訪れたシエラ・ネバダでのひと夏の記録だ。折りしも時代は、カリフォルニアがゴールドラッシュに沸いた直後。多くの土地がマイニングとドリリングで傷付けられていた。

シエラ・ネバダのすばらしい自然を守るにはどうしたらいいのか。文章の端々に書かれているのが、この自然を体験し、すばらしさを知ることが自然を守るために大切だということ。この「保護と利用」の考え方がアメリカの自然保護の大きな柱となり、国立公園の基礎となっていく。そしてこの考え方が、ヨセミテで鍛えられたフリークライミングにも大きな影響を与えているのだが……字数が多くなったのでこの話の続きは次回にしよう。

著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。

https://www.naruseyohei.com

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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