
ヨーロピアンクラックをめぐる旅。イタリア、オッソラ渓谷へ|筆とまなざし#475
成瀬洋平
- 2026年09月17日
ヨーロッパを代表するクラックエリア、オッソラの谷へ
初っ端からトラブルが発生しつつも、なんとかクロードというオッソラ渓谷の小さな村にたどり着いた。
ミラノから北へ車で1時間半。ここはヨーロッパアルプスの端っこで、さらに北に行けば稜線の向こうはスイスである。登山基地グリンデルワルドまでは直線距離にしてわずか50キロほどの近さだ。
今年も知られざるヨーロピアンクラックをめぐる旅に出た。いつの間にか5年連続でイタリアを訪れていて、ちょっとしたライフワークになっていることに気づく。これほど何度もイタリアを訪れることになるとは思っていなかった。人生はわからないものである。
ここ、オッソラの谷には花崗岩の岩場が点在していて、オルコ渓谷と並んでヨーロッパを代表するクラックエリアとして知られている。なかでもカダレゼは、かのバルバラ・ツァンガールがもっとも好きな岩場と評していて、彼女のパートナーであるヤコポ初登の高難度トラッドルート「Tribe」もここにある。谷の東側にそそり立つ壁につけられたつづら折のアプローチをたどると、静かな岩場に無数のクラックが続いている。岩場自体は大きくなく、ルートがコンパクトにまとまっている印象だ。
地方全体がクライミングエリア。さっそくカダレゼの岩場へ出かける
カダレゼのほかにも、オッソラ渓谷にはボルトルートやマルチピッチの岩場がたくさん点在している。この地方全体をひとつのクライミングエリアと見たほうが適切だろう。オッソラのトポは550ページ以上ある分厚いものなのだが、オルコ渓谷やオッソラのひとつ東にあるティチーノの谷のトポも同じくらいのボリュームがある。ここではそれぞれの谷にそれぞれ500ページ以上のトポが存在する。まさに岩だらけなのである。
カダレゼには4年前に一度訪れたことがある。オルコでのクライミングが一段落した10月中旬にやってきたのだが、そのときは雨ばかりで寒かった。ほとんどクライミングをすることなく、暖かい陽射しを求めて地中海の岩場に移動した。今回はそのリベンジというわけだ。
クロード村のアパートは4階建ての古い建物の屋根裏部屋だった。玄関を入ると三つの部屋が縦に並んでいて、突き当たりのテラスからは教会の尖った屋根や南の谷が一望できる。いつもアパートは「Air b&b」のサイトで探している。現地の家に滞在できるのも旅の大きな楽しみである。
翌日からさっそくカダレゼの岩場に出かけた。オルコとはまた違った岩質で、フットホールドに乏しく縁の丸まったクラックが多い。まずはカダレゼでも指折りの美しさを放つ「Colpo di Fumina」というルートを登った。グレードは6c、5.11a/bほど。オフフィンガーからシンハンドというサイズが見た目より難易度を高くしているのだろう。真っ直ぐに伸びる美しさに違わず内容もすばらしい一本だった。
暗く寒々しい印象だったオッソラだが、今回は晴れが続いていて爽やかで清々しい。2週間弱の滞在期間の天気予報は概ね晴れ。まだ少し暑いくらいだが、これからの滞在が楽しみである。
著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平
1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。

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