
愛知・名古屋アジアパラ日本代表が結団式 杉浦佳子らパラサイクリング9選手が伊豆決戦へ挑む
Bicycle Club編集部
- 2026年09月29日
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1975年のフェスピック(極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会)から半世紀の時を経て、アジア最大級のパラスポーツの祭典が再び日本へ帰ってくる。9月29日、都内にて「愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会」日本代表選手団の結団式が挙行された。パラリンピック2連覇の杉浦佳子を筆頭に、自転車競技(パラサイクリング)日本代表は選手9名、パイロット2名の精鋭が選出。有観客の自国開催となる大舞台へ向け、力強い結束を示した。
フェスピックから半世紀 スローガン「ともに挑み、ともにひらく。」を掲げ455人が集結

アジアにおけるパラスポーツの原点となったフェスピック大分大会から50年。日本初開催となるアジアパラ競技大会へ向け、東京都内のホテルで日本代表選手団の結団式が行われた。会場には選手285名、競技パートナー15名、競技団体スタッフ132名、本部スタッフ23名からなる総勢455名の大選手団が集結。自国開催にかける決意を新たにした。
新型コロナウイルスの影響により無観客開催を余儀なくされた東京2020パラリンピック。それだけに、満員の観客と大声援に包まれる国際総合大会の自国開催は、選手・スタッフにとって待ち望んでいた瞬間だ。
式典では、選手やコーチ陣の対話から紡ぎ出された代表スローガン「ともに挑み、ともにひらく。」が発表された。主催者を代表して登壇した公益財団法人日本パラスポーツ協会(JPC)の森和之会長は、「限界に挑み、最後まで諦めずに戦う姿、仲間と支え合いながら前に進む姿は、多くの人々の心を動かし、勇気や希望を届けることでしょう」と激励。

来賓として登壇したスポーツ庁の河合純一長官は、パラ水泳の金メダリストとしての経験を交え、「およそ50年前、日本から産声を上げたフェスピックの歴史と伝統を受け継ぐ誇りを持ってほしい」と語り、東京大会のリベンジとも言える有観客での開催に向けて「会場を味方につけ、応援される選手であってほしい」とエールを送った。
団旗授与では、元車いすラグビー日本代表で今大会の選手団団長を務める三阪洋行氏から、旗手を務める中川もえ(陸上競技)と橋本勝也(車いすラグビー)へ日の丸の団旗が力強く託された。

杉浦佳子直撃「まずはアジアです」 世界女王が誓うリベンジと目の前の頂点

自転車競技(パラサイクリング)の会場となるのは、愛知・名古屋から東へ舞台を移した静岡県・伊豆。トラック競技は東京2020大会の熱戦の記憶が色濃い国内でも数少ない木製250m屋内バンク「伊豆ベロドローム」、ロード競技はアップダウンとテクニカルなコーナーが連続する屈指のタフコース「日本サイクルスポーツセンター(CSC)5kmサーキット」で開催される。
日本代表を牽引するのは、女子C3クラスで東京2020パラリンピック2冠、そして2024年パリ大会でもロードレース連覇を飾った“絶対女王”杉浦佳子(TEAM EMMA Cycling / 総合メディカル株式会社)だ。

今年9月上旬にアメリカ・ハンツビルで開催された「UCIパラサイクリング・ロード世界選手権」でも女子C3ロードレースで銅メダルを獲得し、日本チーム唯一のメダリストとなった杉浦。結団式後の単独インタビューで今大会の最大のライバルを尋ねると、迷いなく中国の王小梅(ワン・シャオメイ)の名を挙げた。
王は、ハンツビルの世界選手権ロードとTTを制した若き強豪。杉浦は「彼女に勝つことが今回の最大の目標です」ときっぱりと言い切る。
さらに、2年後の2028年ロサンゼルス大会への道筋について「王選手に勝てればLAも見えてきますか」と水を向けると、杉浦は引き締まった笑顔で即答した。
「まずはアジアです」
先のパラリンピックを見据えるのではなく、いま目の前にあるアジアの頂点、そして自国のファンの前で勝つことだけに神経を研ぎ澄ます。55歳を迎えてなお進化を続ける世界王者の矜持が、その短い一言に凝縮されていた。
1kmTT除外危機を乗り越えて――木村和平&三浦生誠、奇跡のタンデム再結成

今大会のパラサイクリング日本代表において、ひときわ熱い注目とドラマを集めているのが、視覚障害男子Bクラスのタンデム(2人乗り)ペア、木村和平(楽天ソシオビジネス株式会社)とパイロットの三浦生誠(日本競輪選手会 青森支部)だ。

二人は男子Bクラスの1kmタイムトライアル(1kmTT)を主戦場とし、パリ2024パラリンピックでも6位入賞を果たすなど、世界屈指のスピードを誇る名コンビとして歩んできた。しかし、2028年ロサンゼルス大会で同種目が実施種目から除外されることが決定。パラリンピックでのメダル獲得を活動の軸としていた三浦は、競輪選手としてのプロ生活に専念するため、パイロットとしての活動に一度ピリオドを打っていた。
だが、今回のアジアパラ競技大会では1kmTTの実施が決定。連盟と木村からの熱烈なオファーを受け、三浦は再び木村のパイロットとしてステアリングを握ることを決断した。
日本パラサイクリング連盟の公式発信において、三浦は「離れるからにはきっぱり辞めるつもりだったが、返しきれない恩がある。断る理由はなかった」と恩義を語り、ストーカー(後席)としてペダルを踏み込む木村も「もしかしたら今回が(このペアで走る)最後になるかもしれない。1kmの日本記録更新、そして勝利を目指して走る」と胸の内を明かしている。
二人が刻んできた軌跡の集大成。伊豆ベロドロームの走路を切り裂く渾身のラストランは見逃せない。
アジアの頂点へ挑むパラサイクリング日本代表メンバー
日本代表は選手9名、競技パートナー2名、スタッフ6名の布陣。伊豆決戦に臨む選手たちの横顔と注目ポイントを紹介する。

【男子C2】川本 翔大(大和産業株式会社)

生後間もなく癌により左足を切断。高校時代に自転車と出会い、東京・パリと2大会連続でパラリンピック4位入賞。今シーズンはUCIロードワールドカップで第1戦タイムトライアル・ロードレースの2冠を達成し、見事総合優勝を獲得するなど世界屈指の独走力を誇る。トラックの3km個人追い抜き、ロードTTともに金メダル最有力候補として伊豆のバンクとロードに乗り込む。
【男子C5】亀田 琉斗(日本大学)

2005年生まれの20歳。先天性左前腕欠損のハンデを乗り越え、日大自転車部で健常者とともに腕を磨く若きスプリンター。全日本選手権での優勝をはじめ、アジアパラ選手権でもスクラッチ2位など表彰台を量産している。「自己ベストを出しリザルトを残しつつ金メダルを狙う」と語る通り、若さあふれる爆発的なスピードで伊豆のトラックを沸かせる。
【女子C5】小釜 莉代(Iwaki Pedal Explorers / 仙台市役所)

先天性左前腕切断。パラトライアスロンのアジア選手権で連覇を誇るトップアスリートが、40代を迎えて自転車競技へ本格参戦。仙台市役所に勤務しながら家庭と競技を両立するママさんサイクリストだ。過酷なアップダウンを苦にしない登坂力を武器に、ワールドカップ転戦を経て今大会での優勝を目指す。
【男子B】山路 喬哉(Sky株式会社)/ パイロット:稲毛 健太(日本競輪選手会 和歌山支部)

高校1年時にレーベル病を発症し視覚障害を負う。パラ陸上を経て2025年に自転車と出会い、驚異的な適性を見せて代表入りを果たした。スタートからの圧倒的な加速力を武器とする山路の前席を務めるのは、競輪S級で活躍する現役トップ競輪選手の稲毛健太。木村&三浦ペアとともに、タンデムでの表彰台独占を狙う。
【男子T2】福井 万葉(株式会社バタフライ・エフェクト)

脳性麻痺による平衡感覚の障害を持つ選手が戦う三輪自転車「トライシクル(Tクラス)」。静岡出身の福井は地元開催となる今大会、得意とするロードの厳しい登坂を味方につけ、世界選手権8位からのステップアップとなる悲願のアジア制覇(優勝)を狙う。
【男子H2】野田 昭和(株式会社アイ工務店)

仕事中の事故による第7頸髄損傷から、車いす陸上を経てハンドバイク(Hクラス)の世界へ。力強い上半身のペダリングワークを武器に、2025年・2026年の世界選手権でトップ10入りを連発。照準を合わせる個人タイムトライアルでの金メダル獲得に挑む。
【男子H3】田中 祥隆(株式会社アイ工務店)

2011年の交通事故による脊髄損傷後、クロストレーニングとして始めたハンドサイクルで才能が開花。2025年アジアパラサイクリング選手権ロード大会でTT・ロードレースの2冠を達成し、2026年大会でもTT金を獲得しているアジアの王者。「TT優勝とロードレース優勝」の完全制覇を自国開催で再現する。
「挑戦を愛知・名古屋に残してほしい」三阪団長のエールと伊豆決戦の日程

結団式の締めくくりとして登壇した三阪洋行団長は、自らの競技人生を重ね合わせながら選手たちへ熱いメッセージを投げかけた。
「失敗を恐れず、自分の可能性に蓋をせず、これまで積み重ねてきたものを全て出してほしい。皆さんの一つのプレー、一つの挑戦、そして最後まで諦めない姿が、誰かの心を動かし、スポーツを始めようと思う子どもたちが現れるかもしれません。結果だけではなく、皆さん自身の挑戦を、この地に残してほしい」

愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会の自転車競技は、10月中旬に静岡県伊豆市にて集中開催される。日本CSCの過酷なアップダウン、そして伊豆ベロドロームの極限のスピードバトル。アジアの歴史を受け継ぎ、未来をひらくパラサイクリストたちの勇姿を、ぜひ現地で見届けてほしい。
【大会開催概要:自転車競技(パラサイクリング)】
- 大会名:愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会
- トラック競技:10月19日(月)〜20日(火)
- 会場:静岡県伊豆市・伊豆ベロドローム(木製250m屋内バンク)
- ロード競技:10月21日(水)〜23日(金)
- 会場:静岡県伊豆市・日本サイクルスポーツセンター(日本CSC 5kmロードコース)
- 日本代表選手団:
- 女子C3:杉浦 佳子(TEAM EMMA Cycling / 総合メディカル株式会社)
- 男子C2:川本 翔大(大和産業株式会社)
- 男子C5:亀田 琉斗(日本大学)
- 女子C5:小釜 莉代(Iwaki Pedal Explorers / 仙台市役所)
- 男子B:木村 和平(楽天ソシオビジネス株式会社)/ パイロット:三浦 生誠(日本競輪選手会 青森支部)
- 男子B:山路 喬哉(Sky株式会社)/ パイロット:稲毛 健太(日本競輪選手会 和歌山支部)
- 男子T2:福井 万葉(株式会社バタフライ・エフェクト)
- 男子H2:野田 昭和(株式会社アイ工務店)
- 男子H3:田中 祥隆(株式会社アイ工務店)
- BRAND :
- Bicycle Club
- CREDIT :
- 文と写真:井上和隆
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