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おおいたアーバンクラシック 左回りの高速クリテリウムで寺田吉騎が3名の逃げ切り勝負を制す

秋晴れの大分駅前を舞台に開幕した「OITAサイクルフェス!!!2026」。初日の「おおいたアーバンクラシック クリテリウム」は、進行方向が逆回りの左回りに変更されたことで終始ハイスピードな展開となった。中盤に形成された実力者による逃げ集団がメイン集団の猛追を振り切り、ラスト3名によるスプリント勝負を寺田吉騎(チームUKYO)が制して自身初となる大会制覇を果たした。

新コースの「左回り」がもたらした超高速バトル

大分県大分市の秋の風物詩であり、国際自転車競技連合(UCI)公認レースとして8回目の開催を迎えた「OITAサイクルフェス!!!2026」。その初日を飾る「おおいたアーバンクラシック クリテリウム」が、10月3日(土)にJR大分駅南口前の「大分いこいの道」特設コースで開催された。

コースは昨年から大分駅前のロータリーが組み込まれて1周1.2kmへと延長されたが、今年はさらなる安全性とレースのダイナミズムを求め、従来の右回りから「左回り(反時計回り)」へと周回方向が反転された。これにより、駅前ロータリーを抜けた後のホームストレートが完全な直線となり、JR大分駅の駅舎をバックにフィニッシュラインへとなだれ込むハイスピードレイアウトへと生まれ変わった。

出走したのは、アジアツアーランキング首位を走る中国の強豪リーニン・スターをはじめとする海外6チームと、国内コンチネンタルチームおよび大学選抜ら国内12チームの計18チーム・総勢103名。1周1.2kmを35周、総距離42kmで行われるスピードバトルを一目見ようと、沿道には多くのサイクルロードレースファンや地元サポーターが詰めかけた。

序盤からのアタック合戦と前年覇者・岡篤志を襲った波乱

大分市長・足立信也氏による開会宣言の後、13時ジャストにリアルスタートが切られると、レースはいきなり超ハイスピードな展開に突入した。ストップ&ゴーが減り、高速コーナリングを維持したまま踏み続けられる左回りコースの特徴も手伝い、集団は縦一本に長く引き伸ばされる。

まず動いたのは、先日のアジア競技大会個人タイムトライアルで銀メダルを獲得した今村駿介(日本ナショナルチーム)や日本学生自転車競技連盟(学生選抜)の選手たち。集団先頭で激しいアタック合戦が繰り広げられる中、4周目にシモン・ペロー(リーニン・スター、スイス)が単独でアタックを敢行する。ここに今村駿介と山本哲央(チームUKYO)が鋭く合流し、強力な3名の逃げグループが形成された。

しかし7周完了時、集団の緊張感が高まるなかで大分駅前ロータリーのコーナーで複数名が絡む落車が発生。この落車に、昨年大会の覇者であるディフェンディングチャンピオンの岡篤志(Astemo宇都宮ブリッツェン)が巻き込まれてしまう。クリテリウム特有のニュートラル救済を利用して1周後に集団最後尾へと復帰を果たした岡だったが、すでに前線では逃げを吸収した集団がハイペースで中切れを起こしており、前線へ復帰するために単騎で莫大な脚力を削られることとなった。

実力者4名が先行 小石と寺田がスプリント賞を分ける

落車による混乱と中切れの隙を突き、9周目に集団から鋭く抜け出したのは小石祐馬(キナンレーシングチーム)、クリスティアン・ライレアヌ(リーニン・スター、ルーマニア)、そして前年の本大会2位で翌日のロードレースを制しているエリオット・シュルツ(ヴィクトワール広島、オーストラリア)の3名。

10周回完了時に設定された第1スプリント賞は小石祐馬が先頭通過して獲得。直後に寺田吉騎(チームUKYO)が集団から単独ブリッジを仕掛けて合流に成功し、先頭は国内外の実力者4名による強力な逃げへと発展した。

 

寺田、シュルツ、小石、ライレアヌの4名は、1周1分37秒〜39秒台の淀みないラップタイムを刻みながら美しく先頭交代を繰り返す。小石も「自分向きのレースではない」と自覚しながらも、必要以上に牽引しすぎず、脚をセーブしながらペース維持に徹するクレバーな走りで逃げ集団の推進力を支える。後方ではAstemo宇都宮ブリッツェンやVC福岡が追走集団を組織しようとするものの、先頭に選手を送り込んだキナンレーシングチームやヴィクトワール広島が集団前方で巧みに抑えに入ったため、タイム差はあっという間に15秒から最大20秒前後にまで拡大。20周完了時に設けられた第2スプリント賞は寺田吉騎が手中に収めた。

ライレアヌの脱落とセプルベダの猛追撃 緊迫のタイム差11秒

先頭4名が順調に周回を消化し、逃げ切りが濃厚かと思われた25周目、先頭集団にアクシデントが襲う。ライレアヌが単独で落車トラブルに見舞われ、先頭集団から無念の脱落を喫したのだ。これにより先頭は寺田、シュルツ、小石の3名となった。

先頭にいた選手を失ったことで、それまで集団を抑えていたリーニン・スターの戦術が180度転換する。ワールドツアーのモビスターやロット・ディスティニーで長く活躍したベテラン、エドゥアルド・セプルベダ(リーニン・スター、アルゼンチン)が集団の先頭に立ち、凄まじいハイパワーで追走の鬼引きを開始した。

セプルベダの背後には、チームメイトの逃げ切りをアシストしたいレオネル・キンテロ(ヴィクトワール広島、ベネズエラ)らがぴったりと張り付き、ローテーションを乱そうと牽制する。しかしセプルベダはほぼ単騎で牽引を続け、一時は18秒あったタイム差を残り5周で11秒にまで縮めてみせた。

メイン集団の射程圏内に捉えられ、逃げる3名にも疲労と緊張が走る。だが、渾身の牽引を見せたセプルベダが残り4周で力尽きて後退すると、追走集団の足並みが一瞬乱れる。先頭の3名はこの好機を逃さず、再びラップタイムを1分37秒台へと引き上げてタイム差を13〜14秒へと押し戻した。

残り2周、メイン集団から意地を見せる今村駿介、岡篤志、キンテロが追走のアタックを放つが、タイム差は10秒。協調して全開でローテーションを回す先頭3名には届かず、勝負の行方は逃げ切った寺田、シュルツ、小石の3人による最終スプリントへと委ねられた。

JR大分駅を背にしたゴール勝負 寺田吉騎が完璧なタイミングで勝利

打鐘(ジャン)が響き渡り、迎えたファイナルラップ。牽制で集団に飲み込まれるリスクを避けるため、3名は最後まで協力してハイペースを保ったまま大分駅前ロータリーへと侵入していく。

独走力に秀でる小石が真っ先にロータリーへと飛び込み、2番手に寺田、3番手にスプリント力のあるシュルツがつける。タイトな左コーナーをクリアし、JR大分駅を背にする最後の直線ホームストレートへ立ち上がった瞬間、小石の背後から寺田吉騎が満を持してスプリントを開始した。

外側からシュルツが並びかけようと猛烈に追いすがるが、今季ヨーロッパ遠征で揉まれ、パワーとスピードに磨きをかけてきた寺田の伸び足は衰えない。完璧なタイミングでトップスピードに乗った寺田がシュルツを抑え込み、フィニッシュラインを駆け抜けた。

勝ちタイムは58分01秒、平均時速は43.43km/hを記録。スピードバトルを制した寺田は、ステージ優勝に加え、20周目のスプリント賞、そしてアジア最優秀選手賞をも総なめにする圧勝劇を見せた。

表彰式&選手コメント

優勝:寺田吉騎(チームUKYO)

「新コースの左回りは、僕自身3年ぶりの大分の出場だったこともあってすごく新鮮でした。駅前のロータリー以外は足を止めることなく流れるレイアウトで、非常に走りやすかったです。

中盤にできた逃げはメンバーも強力で、4人でとても安定したリズムを刻むことができたので良かったです。ライレアヌ選手が落車して後ろのリーニン・スターが本気で追ってくると思ったので一瞬ヒヤッとしましたが、残り2周のところで『これは決まったな』と逃げ切りを確信しました。

シュルツ選手は国内のクリテリウムでも勝っている非常に強いスプリンターなので、最後まで警戒していました。これまでのレースではスプリントのタイミングが早すぎたり遅すぎたりして勝ちを逃すことが多かったので、今日は自分の足の状態を冷静に見極め、最後までしっかり『待って、待って』、確実にもがける距離まで我慢してから踏み込みました。先月までイタリアなど海外の過酷なレースを走ってきてコンディションが非常に良いので、明日のロードレースでもチーム全体でいい結果を残せるように頑張ります」

2位:エリオット・シュルツ(ヴィクトワール広島)

「ものすごくハードなレースでしたが、明日のロードレースに向けて非常に良い刺激が入りました。昨年と同じ2位という結果にはなりましたが、調子はとても良いので、明日もファンの皆さんの前で全力を尽くして勝利を目指します」

3位:小石祐馬(キナンレーシングチーム)

「今日はトライをして、明日のロードレースにつなげようと思っていた。結果の良し悪しにかかわらず、状態を把握しておく意味合いが強かった。自分向きのレースではなかったけど、先頭交代時には牽引をしすぎず、脚をセーブしながらペース維持を心掛けた。3位という結果は、一緒に逃げた相手を考えれば悪くない。

明日はクリテリウムとはまったく異なる展開になるだろうけど、チームとしては誰にでもチャンスがあると思うから、状況に合わせて柔軟に対応していきたい。小規模な集団での勝負になれば自分でも狙っていけるし、スプリントになればルーカス(カーステンゼン)や草場(啓吾)がいるので、良い形で立ち回っていけると考えている」

U23最優秀選手賞:望月蓮(チームUKYO)

メイン集団内のスプリントで17位に入り、U23最上位となってホワイトジャージを獲得した現U23全日本王者の望月蓮(チー UKYO)。チームUKYO加入後の国内初戦でしっかりと表彰台に登壇し、翌日のロードレースに向けて弾みをつけた。

決戦の舞台は大分スポーツ公園へ 明日は過酷な150.8kmロードレース

初日のクリテリウムで日本人選手による見事な逃げ切り勝利が生まれ、大きな熱気に包まれた大分市街地。明日10月4日(日)は舞台を大分スポーツ公園へと移し、UCI1.2クラスの本格ロードレース「おおいたアーバンクラシック」が行われる。

1周11.6kmの難関周回コースを13周する150.8kmの戦い。チームUKYOが勢いそのままに連勝を狙うのか、優勝経験者の宇賀隆貴や草場啓吾ら多彩な駒を揃えるキナンレーシングチームが主導権を握るのか、あるいは雪辱を期すヴィクトワール広島やAstemo宇都宮ブリッツェンが巻き返すのか。初秋の大分を巡る熱戦は、明日いよいよクライマックスを迎える。

リザルト

1位 寺田 吉騎(チームUKYO) 58m01s
2位 エリオット・シュルツ(ヴィクトワール広島、オーストラリア)
3位 小石 祐馬(キナンレーシングチーム)
4位 ルーカス・カーステンゼン(キナンレーシングチーム、ドイツ) +10s
5位 ルーク・マッジウェイ(リーニン・スター、ニュージーランド)
6位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム)
7位 風間 翔眞(シマノレーシング)
8位 イェロン・メイヤース(ヴィクトリアスポーツプロサイクリング、オランダ)
9位 孫崎 大樹(ヴィクトワール広島) 
10位 山本 哲央(チームUKYO)

各賞

スプリント賞
10周回完了時:小石 祐馬(キナンレーシングチーム)
20周回完了時:寺田 吉騎(チームUKYO)

U23最優秀選手賞
望月 蓮(チームUKYO)

アジア最優秀選手賞
寺田 吉騎(チームUKYO)

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せいちゃん

せいちゃん

稲城FIETSクラスアクト所属のJプロツアーレーサー。レースを走る傍ら、国内外のレースや選手情報などを追っている。愛称は「せいちゃん」のほか「セイペディア」と呼ばれている

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