
「たすきをつなぐ」思いは企業にも通じる|全日本大学駅伝を支える長谷工グループの挑戦と元箱根ランナーの新たな役割
RUNNING style 編集部
- 2026年10月30日
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「大学駅伝日本一」を決める全日本大学駅伝。全国各地区の選考会を勝ち抜いた大学とシード校などが集結し、愛知・熱田神宮から三重・伊勢神宮までの8区間106.8kmで熱戦を繰り広げる。
学生ランナーたちが一本のたすきに思いを込めて走る舞台を、企業もさまざまな形で支えている。
2019年から特別協賛、駅伝と企業活動に共通する「つながり」とは?
2019年度から大会に特別協賛しているのが、「住まい」と「暮らし」のリーディングカンパニーとして知られる長谷工グループだ。同グループが全日本大学駅伝を支援することになった背景には、駅伝と企業活動に共通する価値観があった。
「駅伝は仲間にたすきをつないでいく競技です。弊社には『全社員がグループ営業マン』という考え方があり、自分が所属する会社だけでなく、グループ各社の事業についても理解し、連携していこうという風土があります。人と人とのつながりを大切にするという点で、駅伝と通じるものがあると考えました」
広報担当者は、協賛の理由をそう説明する。
長谷工グループはマンションの建設だけでなく、販売、管理、修繕など幅広い事業を展開している。各社が専門性を発揮しながら連携する姿は、選手がそれぞれの役割を果たし、チームとしてゴールを目指す駅伝にも重なる。
もう一つの理由が、全国規模で事業を展開する企業としての方向性だ。協賛を開始した当時、同グループは地方での事業展開を強化しようとしていた。全国各地から代表校が集まる全日本大学駅伝は、その取り組みとも合致していたという。
大学スポーツを応援することで、「若さ」「ひたむきさ」「挑戦」というブランドイメージの向上を図るとともに、各地区での営業活動や関係者との交流、学生の採用活動にもつなげている。
全国から約220人が集結、黄色い応援団が大会を盛り上げる
長谷工グループの支援は、協賛金の提供だけにとどまらない。大会当日には全国各地のグループ社員約220人が応援ボランティアとして集結する予定だ。
社員たちは大会前日に名古屋に集まり、翌朝のスタート地点で選手たちを見送る。その後、大型バスで伊勢のゴール地点へ移動し、懸命にたすきをつないできた選手たちを出迎えるという。
「北海道や沖縄から参加する社員もいます。毎年、募集するとすぐに定員が埋まってしまうほど人気があります。普段は接点のない社員同士が一緒に応援することで、横のつながりが生まれることも、会社としてありがたい機会になっています」
大会を応援することが、社員同士の交流や一体感の醸成にもつながっているのだ。
さらに、全国の選考会でも応援ボランティアを募集している。各地区では約40人の社員が参加し、黄色いポロシャツなどを着用して選手たちに声援を送る。特定の大学を応援するのではなく、出場するすべての学生ランナーを後押しするスタイルだ。
選手たちへの差し入れにも工夫を凝らしている。
地区選考会では、地区名を記したオリジナル応援ラベルのミネラルウォーターやボトルキーホルダー、記念タオル、奈良県明日香村の食材セットなどを贈呈。本大会の出場校には、各大学のユニフォームをデザインした特製応援ボトルを用意している。
ボトルには大学ごとに異なる応援メッセージも添えられている。さらに、グループ会社の長谷工あんしんデリが生産する「たなかみ米」1俵分も贈るなど、学生ランナーたちの力になろうとしている。
こうした活動を支えているのは、営業企画部、人事戦略部、コーポレートコミュニケーション部など部門の垣根を超えた社内の連携だ。大会を支える取り組みそのものが、グループの大切にするチームワークを体現している。
箱根駅伝を3年連続で走った山本羅生さんが大会を支える側に
地区選考会、本大会の応援には、人事部門の若手社員も参加。各地区の学連関係者との交流や採用広報にも取り組んできた。
こうした取り組みを続けるなかで、長谷工グループには、陸上競技に打ち込んだ学生も入社するようになった。その一人が、立教大時代に箱根駅伝を3年連続で走った山本羅生さんだ。現在コーポレートコミュニケーション部に所属し、全日本大学駅伝の地区選考会を訪れ、選手への差し入れや大会に関する広報活動、各種手配などを担当している。

山本さんが立教大に進学した当時、同校は箱根駅伝の本大会から遠ざかっていた。1年時の予選会は16位。しかし、2年時には55年ぶりの本大会出場を実現し、山本さん自身も箱根路を駆け抜けた。
「大学で一番学んだのは、正しい道を選ぶのではなく、選んだ道を正解にすることの大切さです。何もないところからチームを作り上げていく楽しさを経験しました」
4年時の春には故障で約3カ月間走れず、競技をやめたいと思ったこともあった。そのとき母親から言われたのが、「止まらずに、右でも左でもいいから動きなさい」という言葉だった。その教えは、社会人になった現在も仕事に生きているという。
就職活動では幅広い業界を研究したが、土地探しからマンションづくりまで一貫して手掛ける長谷工グループの事業に魅力を感じて入社した。
「立教も何もないところから箱根駅伝で戦えるチームになりました。ゼロから作り上げるというところに、大学時代と似た面白さを感じたんです」
入社後は不動産関連の業務やマンション販売の研修を経験。2年目の今年、コーポレートコミュニケーション部広告宣伝チームに異動した。
「いつか陸上競技に携わりたいという思いはありましたが、まさかこういう形で学生駅伝に関われるとは思っていませんでした。学生時代には分からなかった大会運営の大変さや、多くの方々の思いを知ることができました」
かつては選手として支えられる立場だった山本さんが、今度は大会を支える側に回った。学生時代には見えなかった駅伝の魅力を、新たな視点から感じている。
全国の学生ランナーが集う全日本大学駅伝ならではの魅力
山本さんには、大学時代に一つだけ心残りがある。箱根駅伝には3度出場したものの、全日本大学駅伝には出場できなかったことだ。それだけに、現在の仕事には特別な思いがある。

「学生時代は関東地区の選考会しか知りませんでしたが、今年は各地区の選考会に行かせていただいて、関東とは違う応援の熱気や、全国には素晴らしい選手がたくさんいることを実感しました。接戦になるレースも多く、非常に見応えがありました」
全国各地の大学が日本一を目指して集まるのが全日本大学駅伝の醍醐味だ。8区間で順位が目まぐるしく入れ替わり、最後まで勝負の行方が分からない。その熱戦を生み出すのは、強豪校の選手だけではない。各地区を代表して挑戦する学生ランナーたちの存在も欠かせない。
「走る選手だけでなく、運営する方々や応援する方々など、本当に多くの人が関わっています。自分が選手だったときに支えてもらっていたありがたさに気づきましたし、今度は自分が支える側として関われることにやりがいを感じています」
山本さんは現在もランニングを続けており、多い月には300km以上走ることもある。仕事帰りに走ったり、立教大時代の後輩と一緒に汗を流したりする時間が楽しみだという。
「今は純粋に走ることが楽しいんです」
かつて箱根路でたすきをつないだ青年は、社会人になっても走ることを愛し、今度は大会を支える仕事に情熱を注いでいる。
長谷工グループは今後も、目標に向かって日々挑戦し続ける学生ランナーたちを応援していく。
全日本大学駅伝には、たすきをつなぐ選手たちだけでなく、その挑戦を支える多くの人々の思いがある。
11月1日、熱田神宮から伊勢神宮へとつながれる一本のたすき。その先には、選手たちの努力と、それを支える人々の願いが込められている。
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◎テキスト:酒井政人
◎タイトル写真:日刊スポーツ/アフロ
◎写真:竹中侑毅
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